展覧会レポート
2011/05/15
松本秋則展 Sound Scenes
音と緑と浮遊感
会場に入って一番最初に目がいったのは、失礼ながら多数並んだ作品ではなく、その奥に見えた窓の外の緑だった。そこからUターンするように視線を走らせる。無数のモビールや飛行機のような形のオブジェが吊り下がっている。床置きの作品もある。それらは四角い緑と共存してすがすがしい空気を部屋に充満させている。六本木に緑がこんなにあるんだ!という驚きと、時おり動いて鳴り出す楽器の素朴な音色がなんとも気持ちをなごませる。
2011-05-15 at 01:04 午後 in 展覧会レポート | Permalink | コメント (0) | トラックバック(0)
2010/04/11
ムラギしマナヴ個展「シギラム教授のおかしな世界」
鴨川沿いの散りかかった桜もいっそう美しく、お花見を楽しむ人々で賑わう出町柳界隈。出町柳駅からすぐのトランスポップギャラリーでムラギしマナヴさんが個展を開催中だ。ガラス張りの入口から見えるその賑やかな展示の様子は、なんだかとても楽しそうで、そして少し怪しげ(?)。そのせいか、ギャラリーのドアを開ける前に、通りがかりの人々がガラスに顔を近づけて中を覗き込む姿もしょっちゅううかがえて可笑しかった。
2010-04-11 at 01:30 午前 in 展覧会レポート | Permalink | コメント (0) | トラックバック(0)
2009/11/02
Tokyo Midtown Award 2009
魅力的なアートとデザインの逸品が見られる
東京ミッドタウンが昨年スタートしたアートとデザインの公募「Tokyo Midtown Award」。この度2度目の審査結果が出て、現在入賞作品が展示されている。
会場は人の流れが途切れることのないプラザB1Fメトロアベニュー展示スペース。手前が平田創「Funky Project 09 Japan Colors」
同公募は、東京ミッドタウンのコンセプト「JAPAN VALUE(新しい日本の価値・感性・才能)」の創造を目指すためのコンテンツの一環として創設された。目的は次世代を担うアーティストとデザイナーの発掘、支援である。同公募に限らないが、初回は主催者側の意図や求めるイメージが十分伝わらない場合が多い。前例がないため仕方のないことだが、特にアートコンペの展示空間「通路ガラスケース」という特殊な場に難しさを感じた応募者も結構いたと思う。それでも第1回は多数の応募作品が集まり、ガラスケースでの発表はなるほど!と思えるものが見られたし、デザインコンペでは「日本の新しい手みやげ」にぴったりなウィットに富んだ作品が選ばれていた。
2009-11-02 at 11:55 午前 in 展覧会レポート | Permalink | コメント (4) | トラックバック(0)
2009/09/24
柔らかな器—感覚の境目を行き来する6人の作家
遊覧のライターでもある筆者(水田)がコーディネートした展覧会「柔らかな器」が10月4日まで松の湯二階を舞台に開催している。本展は、参加作家の一人である工藤春香が発起し、6人の30代前後の作家で構成されたグループ展だ。工藤に、創る喜びと観る喜びが直接結びつくような展覧会を作りたいので、協力して欲しいと言われたところから、場所を探し、お金を集め展覧会開催までまとめ役を担当した立場から展覧会について簡単に紹介したい。
■会場「松の湯二階」
会場の松の湯は、一階は今も営業中の銭湯で、15時の営業前には今も近所の人が開店を待っている。そんな温かい風景が間近にある場所で展覧会を開催することができたことが今回の収穫の一つだろう。二階は以前はサウナとして使われた場所で、マッサージ室、休憩室、そして小さな洗い場などがある不思議な場所だ。見に行ってすぐに気に入ったのはベルベット地の赤い壁や、繰り抜きの天井、それからピンクのトイレなど、怪しげでノスタルジックな雰囲気と人が集っていた場所だということが、今回の展覧会の意図に添うと感じたからだ。ギャラリーや貸し会場など整った場所ではなく、人の生活に寄り添うような場所で美術の作品を見れたら面白いし、理想かもしれないが音楽を聞くことや、ご飯を食べることと同じくらい普通に展覧会を見てもらえたら、という思いもある。
2009-09-24 at 12:40 午前 in 展覧会レポート | Permalink | コメント (0) | トラックバック(0)
2009/06/24
齋藤真紀水彩画展/坂本佳子展「Mae-Rim」
作家の掟。ある意味、対照的な2つの個展
齋藤真紀展の案内状が届いた。DMの他にいつも必ずテキストが添えてある。今回のタイトルは「三浦半島記」。個展のために取材した三浦半島の地名にまつわる話が綴られていた。真紀さんは横浜から自転車で半島を回ったという。そういえば以前、サイクリングスタイルの真紀さんを見かけ、驚いたことがあった。
左は齋藤真紀展の会場風景、右は坂本佳子作品
2009-06-24 at 03:52 午前 in 展覧会レポート | Permalink | コメント (0) | トラックバック(1)
2009/06/06
しんぞう個展「スキンシップ」
先週で終了してしまいましたが、ペインティングのアーティスト、しんぞうの個展が衝撃だったので報告します。
しんぞうというアーティスト名を聞き、作品を見ても、一体どういう人が描いているのだろう?と疑問を持つ人が多いのではないだろうか。絵を見て、性別や年齢を判断するのは難しいし、アウトサイダーアートのようにも見えるかもしれない。でも一度しんぞうの作品を見たら、頭にこびりついて忘れることはない体験ができると思う。終了してからの紹介なのだが、機会があったら是非見てもらいたい作家の一人だ。
2009-06-06 at 06:09 午後 in 展覧会レポート | Permalink | コメント (0) | トラックバック(0)
2009/05/27
加藤亮 envelope 3
展覧会のタイトル「envelope3」とは、「封筒」を意味しているのではなく、星が形成される途中の段階の星くずの状態を表す言葉だという。展覧会タイトルの話から始めてしまうとロマンチックに満ちたSF的世界を表現している作品のように感じるが、FRPの大きな立体作品を実際に目の前にすると、唐突なモチーフの組み合わせや、微妙な色の変化、形態の面白さに、まずは心を奪われる。肌色の巨大な魚は、実際に釣られたことがある記録的な大きさのまぐろを模していて、壁にかかったレリーフから抜け出て泳いでいるようにも見える。壁に設置してあるレリーフには、葉脈のようにも、木の枝や、道のようにも見える模様が広がっている。レリーフの表面の盛り上がった白い立体は、水しぶきのようにも精液みたいにも見え、立体作品と平面をつなぐ要素のようだ。魚の表面の襞や、模様の点は何を表しているのだろう?
2009-05-27 at 09:51 午後 in 展覧会レポート | Permalink | コメント (0) | トラックバック(0)
2009/05/08
宮本智之 運動と洞穴展
自由が丘にある家具店に併設されたT&S Galleryで宮本智之の個展が開催中だ。物との距離感や、中心性のなさ、静かに反復しながら連なっていく立体作品の求心力が面白くて二度も見に行った。
広いスペースに、バラバラと物が配置され構成されている。巨大な木材を固定する養生テープ、ペットボトルに入れられた紙片、砕けたプラスチックカゴや絨毯、ビニール袋などの部分で構成されているのだけれど、ひとつひとつを思い出そうとしても記憶が横滑りして曖昧にしか思い出せない。身の回りにあるものだけを用いて作品を作っているのではなく、それぞれに物語があるわけでもなさそうだ。
2009-05-08 at 10:01 午後 in 展覧会レポート | Permalink | コメント (0) | トラックバック(0)
2009/01/30
坐れない椅子の羅列。加藤哲展
集積というのはそれだけでチカラを持つ。チカラといっても強さというよりも魅力。個体を超えるモノになるのだ。ギャラリーには針金でつくった椅子が行儀よく並んでいた。窮屈過ぎず、適度な距離を保ち、でもきっちり計って並べましたという感じではない。椅子の一辺は20cm程度のドールサイズ。
2009-01-30 at 03:13 午後 in 展覧会レポート | Permalink | コメント (0) | トラックバック(0)
2008/12/19
塩川彩生 「鏡の中の影」
何時間もの列車の旅をしていて、つい熟睡してしまった。覚めた瞬間に自分の家なのか旅先 の宿なのかわからなくなり、電車の中の自分に着地するまでに時間がかかったことがある。自分自身にぼんやりとした何層もの膜ができたような数秒間はとても心地が良くて生々しかった。その感覚は子どもの頃の記憶を思い出すときの生々しさに似ている。記憶が曖昧なのに、色や匂いだけ在り在りと思い出したり、会話の一断片を再現したりする瞬間がある。そしてそのどれもが実際に起きた事なのか、記憶を織り交ぜた想像による瞬間なのか定かではないのだ。塩川彩生の作品に触れると、子どもの頃の記憶の断片に触れながら、新しい記憶を作って遊んでいるかのようで、曖昧で未完成にも見える作品から活力を感じる。
2008-12-19 at 03:57 午後 in 展覧会レポート | Permalink | コメント (0) | トラックバック(0)