田中隆博展

「とどまる光と影」　

第1室 展示風景(リトグラフ作品)

■銀色のアルミニウムの箱と、フレームに入ったリトグラフ作品を7枚、コンクリートの床に直に置いて、壁に立て掛けている。4色3刷の工程を経た作品は、写真をもとに作られたものだ。紙に染み込んだインクの質感が版画の場合少し湿り気を帯びた印象を与えるが、この作品にはそういったものをあまり感じない。

■鉄板を養生のために敷いた工事現場の地面。一部のスキもないというようなものではない。でもなにやら秩序めいたものがある。扉から画廊の内部を見ると、灰色の床からそのままモノクロームのリトグラフのイメージにつながってゆく。

■1室めのリトグラフとは対照的な展示となっていたのが、第2室である。床も含め、6方の面はすべて同じ色の白のペンキで塗装された四角い部屋。まぶしいばかりのこの部屋にあるのは、少しブレたドアノブ、鍵穴の写った写真と、真っ白なままの印画紙、印画紙のセンターに垂直に切り込みを入れただけの真っ白な印画紙が鉄のフレームに囲われた5点。

■廊下の窓わきにぽつりと掛けられた1枚の写真があった。観者を挑発するでもなく、拒むでもない2つの部屋と廊下にあるこれらの作品との距離感は、「そこにある」ということ以外は表現のしようがないものだ。しかし、視覚だけでなく、身体に直接響いてくるというのだろうか。知覚に強く残像を刻み付けるものだった。

田中隆博 new works
2001年11月24日(土)～12月22日(土)
児玉画廊 Kodama Gallery
大阪市中央区備後町4-2-10 丸信ビル2F
(地下鉄本町駅2番出口より北西へ徒歩2分)
11:00～19:00 日月休
TEL.06-4707-8872

words:原久子

第1室

第2室 展示風景(写真)

第2室

廊下に掛けられた写真