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2010/04/11
ムラギしマナヴ個展「シギラム教授のおかしな世界」
鴨川沿いの散りかかった桜もいっそう美しく、お花見を楽しむ人々で賑わう出町柳界隈。出町柳駅からすぐのトランスポップギャラリーでムラギしマナヴさんが個展を開催中だ。ガラス張りの入口から見えるその賑やかな展示の様子は、なんだかとても楽しそうで、そして少し怪しげ(?)。そのせいか、ギャラリーのドアを開ける前に、通りがかりの人々がガラスに顔を近づけて中を覗き込む姿もしょっちゅううかがえて可笑しかった。
それもそのはず、壁面にはアフリカやメキシコのお面や人形を想起させるようなオブジェや段ボール製の平面作品がところ狭しと展示されている。色とりどりのそのありさまは、まるでどこかの民芸品店か土産もの屋のよう。聞くと今展は、ムラギしさんが日頃もやもやと浮かぶプリミティブで呪術的なイメージを、「架空の民俗学者のコレクション」という設定で構成したものなのだという。ちなみに、その架空の民俗学者の名前は、“シギラム・ブナマー”。コリャマタ先住民の神話研究を中心に活動し、『悲しき変態』『明日のトーテミスム』『野菜の思考』などの著作をもつ妄想家なのだそう。この展示にまつわるユーモラスな物語設定を聞くだけでも、興味がかき立てられてワクワクする。
鮮やかな色彩とユニークなモチーフが、どこかで見たことがあるような既視感をくすぐるけれど、実際にはもちろんないものばかり。展示されたそれら一点ずつのちょっと不気味で可愛らしい表情もさることながら、集合体としての魅力も大きく、少し離れて壁面全体を眺めると、奇妙なその世界へ吸い込まれていくようで連想が広がっていく。
この「民芸品」の数々の展示に釘付けになったところでふと振り返ると、反対側の壁面には、これまたどこかで見たことのあるような、映画のワンシーンを彷彿とさせるペインティングの数々。哀愁の漂う場面のイメージも「民芸品」とはまったく印象が異なる作品だ。これらも“シギラム教授”の美術品コレクションなのかしら?聞きそびれてしまい、未だに気になるところだけれど、とにかく会場にはさまざまなタイプの作品がぎっしりと、ただし、雑多にではなく、分類された図鑑のように並んでいて、見るのが楽しい。そんな展示にムラギしさんの作家としてのキャラクターもうかがえる。また、“シギラム教授”という名前が示すとおり、あちこちに見つけることができる「鏡」の要素にも注目。最終日になってしまったがまだ間に合う。出町柳界隈のお花見もかねて春の生き生きとした雰囲気をここでも味わってほしい。
京都市左京区田中関田町22-75075-723-1780
4月1日(木)〜4月11日(日)
水〜土/12:00〜19:00
日曜日/12:00〜18:00
“シギムラ教授”の蒐集品をカテゴリごとに紹介するホームページも愉快
words:酒井千穂
2010-04-11 at 01:30 午前 in 展覧会レポート | Permalink
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