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2001/03/12

猪瀬光 写真展

「じわじわと忍び寄る」


■久々に「写真」を見た感じがした。私が考える写真魂に極めて近かったという意味で。写真には衝動的な写真、奇をてらった写真、記録的な写真、コンセプチュアルな写真…いろいろあるが、そのどれでもなかった。

■開催前から猪瀬光さんについての前評判は耳にしていた。ほとんど発表していない作家で、8年振りの個展。かつて写真雑誌「deja-vu」で特集を組まれた数少ない写真家のひとりだということ。そして、この展覧会の実現に写真家・森山大道さんが大きく関与したこと。いずれにしても、私にとっては初めて知る作家だった。

■猪瀬さんの作品、幸運にも無人の空間で出会うことができた。いつものクセでタイトルを探すが作品近辺には見あたらない。被写体は森林風景、解剖死体、動物といろいろだった。モノクロームで統一されていて独特の雰囲気があるには違いないが、最初の数分はどう見たらいいのか困惑した。

■解剖死体の連作は、徐々に解体されていく様を写したものだ。非常に渇いた感じで模型みたいで不思議とリアルさがない。死体といえば、何年か前に見た死体カメラマン釣崎清隆の写真展「死化粧師オロスコ」のリアルさが頭の片隅に残っていたため、こんなに冷静に死体写真を見られるなんて思いもよらなかった。

■樹木や廃墟の作品は、こんな場所あるんだ、という感心から画面をなめるように見る。ツタが絡まる廃墟や古木におどろおどろしさが感じられないわけでもない。鳥類や爬虫類を撮ったものもあった。ふと思ったのは、音が断たれた世界であるということ。急に耳をふさがれた瞬間のような感覚を覚えた。ストレートフォトなのに、非現実さを内包している。

■「写真は面白いですよ」猪瀬さんの一言が、それまで感じていた無音状態を遮断してくれた。決して大きくない、どちらかといえば小さな画面。でもそこに潜むものが後からじわじわと忍び寄ってくる、そんな写真である。

猪瀬光 写真展
2001年3月12日(月)〜3月24日(土)
Space Kobo & Tomo
東京都中央区銀座1-9-8奥野ビルB1F(左階段地下)
(営団地下鉄有楽町線「銀座1丁目」より徒歩2分、営団地下鉄銀座線「京橋」より徒歩3分)
12:00〜19:00(24日〜17:00)
無休 入場無料
TEL 03-3538-3250

3月17日(土)19:00〜20:30
猪瀬光VS森山大道の対談有り。司会は飯沢耕太郎。
スペース内は申し込み多数のため締め切ったが、立ち聞きは可

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ツタの絡まる廃墟。
偶然振り返って見つけた風景だという

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鳥を写した作品。でもそれだけじゃない気がする

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森林の中の樹木。実際に出会いたい風景

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何かが潜んでいそうな気配を感じる


2001-03-12 at 09:28 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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コメント

大活躍をしって喜んでます お元気ですか?
20数年前にお世話になりましたカキヌマサーカスの雅弥です おそかれながら最近ネットをはじめてしりました 是非機会がありましたらお会いしたいですね 

投稿情報: 日生雅弥 | 2009/07/03 23:38:33

大活躍をしって喜んでます お元気ですか?
20数年前にお世話になりましたカキヌマサーカスの雅弥です おそかれながら最近ネットをはじめてしりました 是非機会がありましたらお会いしたいですね 

投稿情報: 日生雅弥 | 2009/07/03 23:38:36

大活躍をしって喜んでます お元気ですか?
20数年前にお世話になりましたカキヌマサーカスの雅弥です おそかれながら最近ネットをはじめてしりました 是非機会がありましたらお会いしたいですね 

投稿情報: 日生雅弥 | 2009/07/03 23:39:02

マー君かい?

投稿情報: 覚えてますか? | 2010/04/11 4:15:09

空中ブランコをしていた川越のマー君だよ  おれだよ   

投稿情報: マー君 こんにちわ | 2010/04/11 9:15:08