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2001/03/09

ARTISTS' DEBUT展

「フラボノ効果」


art127_01_1八木隆行「Untitled」2001年


■日本のアート界では、いつから何をもってアーティスト・デビューというかが曖昧だ。個展で何度も発表していても「自分がアーティストかどうかは人が決めるもの」という人もいる。だからこの展覧会名は、思い切ってるなあと感じたりもする。でも、当たり前といえば当たり前。本展の若手作家9人は、現代美術センターCCA北九州の出身者・学生が多く、東京では未発表の人がほとんどだ。

■階段を登ると、猫が見えてきて、まんまとだまされた。これを描いた渡部裕二は、会場内でも壁の下部だけに、繊細な草のドローイングと足の映像作品を展開している。八木隆行は、入口入ってすぐに公園のような広場をつくった。天井からは、各作家名を書いた標識が吊り下がっている。人が集い、それぞれの道がはじまるようだ。

■全体に、楽しませるセンスを感じさせる作品が多い。ドリルのコードが寸足らずで、何度やっても電源からはずれてしまう姿を描く、渡辺郷のビデオ・インスタレーション。会場の電源に、その答えが仕掛けてあって笑える。岡本秀樹のビデオ・インスタレーションは、男がタイムトンネルをふらふらと歩いてきて、飛んできた学生帽をかぶるというもの。横に展示された3次元の学生帽が2次元の世界に飛び込んでくるみたいだ。自意識過剰な年齢と規制帽。でも、それをもって世間にはまだ子供だと示せる分かれ道。「ドラえもん」的なノスタルジーも感じた。両作とも映像がループするのだが、行為の反復が“先へ行けない”絶望と、“あきらめない”希望の両方を表しているようにも見えた。

■濱門慶太郎は、図鑑に印刷された人や動物に切り込みを入れて折り返すと、裏ページの別世界に出てしまう「飛び出す絵本」のような立体作品。特に、移動図書館を見ていたおばちゃんが、土星の上に立ちあがる作品は“ひょうたんからコマ”だ。何の作為もなく、裏表の位置関係にあったモノたちに、“世界”ってこういうものかもなと思う。

■ほか嶺村歩、米田知子、八木奏、ガブリエル・ル・コック。いずれも今後が楽しみだが、個人的にはユーモアのある作品がスッキリ、フラボノ効果がありました。

ARTISTS' DEBUT展
2001年3月9日(金)〜4月7日(土)
RICE GALLERY by G2
東京都江東区佐賀1-8-13食糧ビル3F
(地下鉄半蔵門線水天宮前駅2番出口より徒歩8分。
隅田川大橋渡り右折、「まぐろ屋」左折)
11:00-19:00
日月祝休
料金無料
TEL.03-5245-5522

words:白坂ゆり

art127_01_2渡辺郷「Drill Man」1999年

art127_01_3濱門慶太郎「切り抜き(牛)」1998年
…福島で水を飲んでいる牛

art127_01_4裏側を見ると、ホントは北海道かどこかで草を食べていた

art127_01_5架空の会社をつくった嶺村歩「Are You Meaning Company」1999年

art127_01_6岡本秀樹「キデヒトモカオ」2000年

2001-03-09 at 09:21 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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