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2010/07/31
Jakub Julian Ziolkowski「Timothy Galoty & The Dead Brains」
死んじゃった脳ミソ
NYから塩崎浩子さんのレポートです
脳ミソに目のついた人間、乳房だらけのミュータント、首の飛び散った肉と骨だけの恋人たち。描かれているのは気持ちの悪い異形のものなのに、クラシカルな暗い色の深みやディテールにひきこまれる。1980年ポーランド生まれの若いアーティストJakub Julian Ziolkowskiのアメリカでの初めての個展が、マンハッタン、アッパー・イースト・サイドのHauser & Wirth New
Yorkで開かれている。
Jakub
Julian Ziolkowski 《Timothy
Galoty & The Dead Brains》2010 Oil on
canvas 144 x 110 cm
/ 56 3/4 x 43 1/4 in © Jakub Julian Ziolkowski Courtesy the
artist and Hauser & Wirth
2つのフロアに50点を超す新作ペインティングとドローイングが展示されている。入口すぐには展覧会タイトルの「Timothy
Galoty & The Dead Brains」がある(写真上)。Timothy Galoty・・・はZiolkowskiによる架空のバンドで、ライブのポスターのようなこの作品に描かれている人間は頭が二つに割れ、目玉やら視神経やら脳ミソやらが飛び出し、その脳ミソは宿主と同じ目玉模様の蝶ネクタイをした別の生き物になっている。その体を侵食していく草花や虫たちとともに右下に小さく小さく描かれたメガネ姿の青年はアーティストの自画像だろうか。
Jakub
Julian Ziolkowski 《The
Clash》2010 Acrylic
and oil on canvas 175 x 210 cm
/ 68 7/8 x 82 5/8 in © Jakub Julian Ziolkowski Courtesy
the artist and Hauser & Wirth
Ziolkowskiはポーランド南東部の小さな街ザモシチで生まれた。16世紀に作られたこの街は城壁に囲まれた要塞都市として栄え、イタリア・ルネサンス様式の建築が今も残る歴史ある場所だ。 彼が生まれ育ったそんな環境や複雑な歴史が細かな層になって作品に刻み込まれ、その層の間から、ばかばかしいユーモアや若く暴力的なエネルギーが鮮血のように噴き出している。ミュータントたちが支配するこのDead Brains(死んじゃった脳ミソ)の世界には強烈な終末感が漂っている。「Aokigahara」と名付けられた風景画に描かれているのは富士、青木ヶ原樹海だろう。彼の脳内風景はこの世の終わり、あるいはこの世の終わりのそのまた後の世界を映し出している。
Jakub
Julian Ziolkowski 《The
Mystery of Neocortex》2009-2010 Oil on
panel 44 x 42 cm
/ 17 3/8 x 16 1/2 in © Jakub Julian Ziolkowski Courtesy
the artist and Hauser & Wirth
Ziolkowskiはニューヨークのニュー・ミュージアムで2009年4月に開かれた、1976年以降生まれの若いアーティスト50人を世界中から集めた「The Generational :Younger Than Jesus」展にも選ばれた注目の人。この秋の韓国・光州ビエンナーレにも参加予定である。
Words: 塩崎浩子
★Jakub Julian Ziolkowski 「Timothy Galoty & The Dead Brains」展は Hauser & Wirth New York で7月30日まで開催
2010-07-31 at 01:17 午後 in ワールド・レポート | Permalink
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