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2010/06/24

Bureau「Solid-State」

ありふれた、不変の、固いもの

Hubbard-announcement07-still5.j NYか ら塩崎浩子さんのレポートです。

ニュー・ミュージアムの近く、ギャラリーが増え続けているロウアー・イースト・サイド地区。大手ギャラリーで経験を積んだ若いギャラリストが独立し(女性も多い)、小さいながらも自分のスペースを構えている。チェルシーにはない初々しさや、気合いや、ダウンタウンらしいラフな感じが面白い。最近はさらにその地域が南へ広がり、“ロウアー”・ロウアー・イースト・サイドに新しいスペースが増えている。今回はその一つ、チャイナタウンの東端に位置するBureauを紹介したい。 

Alex Hubbard《Announcement》2007 Digital video 2:11 min. Courtesy the artist and Maccarone, New York

Griffin-Untitled2010 行き交う人は中国人がほとんど、緑多い静かな通りに面した6畳ほどの空間。2010年にオープンしたBureauの初めての展覧会「Solid-State」は1970年代生まれの5人のグループ展で、彫刻、絵画、ビデオ、写真あわせて6点を展示している。 Solid-State」とは「固体ー状態」、つまり形や質量が変わることのない強固な状態のこと。プレスリリースには「物体は果たして、アーティストによってシンプルに取り扱われ、凡庸なままでいられるか」という謎かけのような問いがある。5人の作品はいずれも捨てられたものや身近にあるものを使っており、この展覧会は作品を見せると同時に、物体とそれを扱うアーティストとの関係性についても言及している。

Vivienne GriffinUntitled2009 Water bottles, found table, car spray paint, metal rings, key rings Dimensions variable. Courtesy the artist

Alex Hubbard(1975年アメリカ生まれ)のビデオ作品「Announcement」(写真上)はコピー機のガラス板の上に、造花、シルクハット、ろうそく、スパゲッティ−、レタスやレモン、生魚まるごと一匹!までも無雑作に並べてはコピーをし続けるもの。コピー機の眩しい光が、雑多な物体を透過し規則的に左から右へと流れていく。カラフルで生々しい物体もコピー機にかかれば単純な白黒のイメージとなり、淡々と増殖していくだけだ。

VK-smallchocolate2010拾ったテーブル、水のボトル、金属のリングなどの素材を組み合わせたVivienne Griffin1975年アイルランド生まれ)の作品(写真中)では、それぞれの物体の特つ形や質感が呼応し合い、ゆるやかにつながり、美しい彫刻へ変化している。

Viktor Kopp1971年スウェーデン生まれ)の絵画「Small Chocolate」(写真下)は4つの茶色いグリッドを描いた抽象画なのだが、甘くてとろけそうな板チョコ(の絵)でもある。

作品を見ることは、それが表わし示すコンテキストを読み取ると同時に、物語や文脈から開放された物質そのものに接することでもある。いくらおいしそうなチョコレートでも絵であればそれはただの絵の具の固まり(Solid-State)なのだ。

Viktor Kopp《Small Chocolate》2010 Oil on canvas 18 x 12.5 in. Courtesy the artist and Bureau, New York

Bureau「Solid-State」は7月18日まで開催。

Words: 塩崎浩子

2010-06-24 at 01:20 午前 in ワールド・レポート | Permalink

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