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2009/06/24

齋藤真紀水彩画展/坂本佳子展「Mae-Rim」

作家の掟。ある意味、対照的な2つの個展

11_2 齋藤真紀展の案内状が届いた。DMの他にいつも必ずテキストが添えてある。今回のタイトルは「三浦半島記」。個展のために取材した三浦半島の地名にまつわる話が綴られていた。真紀さんは横浜から自転車で半島を回ったという。そういえば以前、サイクリングスタイルの真紀さんを見かけ、驚いたことがあった。

左は齋藤真紀展の会場風景、右は坂本佳子作品

2_3 ここ数年、同じギャラリーでガッシュや油絵具による風景画を発表している。一見抽象画に見える作品だが、タイトルは観音崎、荒崎、桜山など具体的地名が付けられている。現地でスケッチし、イメージを頭に刻み、アトリエに戻って描写したという。即興的な筆致は、思考があれこれ表出しないようにするため。技量ゆえの手慣れを嫌っている。じっと見ていると・・じんわりと風景が浮かんでくる。

齋藤真紀「逗子」

以前に比べ、色の重なりが少なくなり、原色のままの絵具が画面を占めるようになった。「シンプルでいてきれいな印象が素直に与えられたらいい。風景を描くようになってそう思うようになった」。立体、タブロー、版画、墨の仕事などこれまでいろいろ手掛けてきた真紀さんだが、求めるものへ近づいてきた兆しを話してくれた。

2_4 同じ日に訪れた坂本佳子展もいい展覧会だった。大作とリズミカルに並べた小品で緩急をつけた空間。これまでも布地を多用し、絵柄や素材を画面の中に取り込んで独特の画面をつくっていたが、最近はハイビスカス柄の生地がお気に入りのよう。鮮やかなブルー地にピンクの花が映える生地を、描画の上に貼ったり、そっくりに描いたりしている。なぜ?と思わせる手法が、絵画へのしたたかな挑戦のようにも感じる。

坂本佳子展会場風景

今回は人物が出てきたのが目新しかった。といっても、扉の隙間から姿の一部が見えるだけの気になる構図。どことなく古典絵画とクロスオーバーする。佳子さんは昔から、プール、ガレージ、水平線をモチーフにパースペクティブな原色風景を描いてきた。遠近感をきっちりと印象付ける気持ちのいい作品ばかりだ。前述の齋藤作品とは、描写的に対極をなすが、思い切りのいい色彩感覚、好きなものを好きなように描いている点などは通じるものがあり、どうしても一緒に紹介したくなった。

齋藤真紀さんと坂本佳子さん。いずれもコンスタントに制作、発表してきた同世代の作家である。目新しいものになびきがちな昨今、自分にもその傾向がないわけではないが、ふたりのような作家がまだまだ居ることも忘れてはならない。地に足をつけて創作し続けることがどれほど大変で大切なことか・・・も。

齋藤真紀水彩画展
アトリエスズキ
2009年6月17日(月)〜6月27日(土)
会期中無休
11:00〜18:30(最終日は17:00まで)
入場無料
TEL 03-3571-4877
〒104-0061 東京都中央区銀座5-5-13 並木通り坂口ビル4F

坂本佳子展「Mae-Rim」
ワダファインアーツ
2009年6月5日(金)〜6月27日(土)
日月休
11:00〜19:00
入場無料
TEL 03-5848-7172
〒104-0045 東京都中央区築地3-2-5 第2平和田ビル1F

words:斉藤博美

2009-06-24 at 03:52 午前 in 展覧会レポート | Permalink

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