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2009/11/22
マイケル・ウィリアムズ「Uncle Big」展
どこか大阪風
NYから塩崎浩子さんのレポートです。
展覧会案内のハガキに印刷された、個展のタイトルでもある「Uncle Big」という作品は、キャンバスらしき平面を突き破ってこちら側に刺さる大きな絵筆が一本、画面いっぱいに描かれている。この筆が「ビッグおじさん」? 1978年生まれの若手ぺインター、マイケル・ウィリアムズ(Michael Williams)のカナダ(ギャラリー名)での2度目の個展「Uncle Big」では、奇天烈な、擬人化された世界が繰り広げられている。
Michael Williams《Surf 'n Turf》2009 Oil on canvas 40 x 60 in Courtesy of CANADA
「Surf 'n Turf」(写真右上)では、真っ赤に茹であがったロブスターと貝殻のすき間から目を出すハマグリが並んでコンピューターの前に座り、画面を見つめながら何やら作業している(ちなみに「Surf 'n Turf」には「シーフード付きステーキ」の意味がある)。背景に目を移せば、画面右上から左下へ放射線状に伸びる線と線の間にカラフルな木目や渦巻き模様がすきまなく描き込まれている。絵の具が匂ってきそうなほどこってりとした厚塗りで、筆跡は画面の上でうねり、画面のところどころに噛み捨てたガムのような絵の具の固まりがくっついている。
Michael Williams《Bacon 'n' Eggs》 2009 Oil and Acrylic on canvas 50 x 74 in Courtesy of CANADA
「Bacon 'n' Eggs」(写真左)では、絵筆(多分男)が、リラックスした様子で寝そべる絵筆(多分女)をモデルにして、イーゼルに向かって絵を描いている。絵筆を握るその絵筆自身にもスポットライトが当たり、影が長く四方に広がっている。天井からぶら下がるランプはよく見るとベーコンエッグのようでおいしそうだ。「Peanut」(写真右下)では、一匹の茶色い猫が対戦相手側のコートを血走った眼でぎろっと睨みながら、卓球台を悠々と横切っている。
ウィリアムズの作品は「見ること」と「見られること」をテーマにしているという。擬人化(という行為も丁寧な観察から生まれるものだろう)された登場人物たちは何かを描き、見つめ、そして同時に見つめられているーー。それは彼の日常生活や見た夢の描写、セルフポートレートと言えるかも知れない。そして、偏執狂的とも言える背景の描き込みや、絵の具や筆跡の生々しい質感も、観客に「見る」愉しみを与えてくれる。ギャラリーに入るなり、いきなり「大きなエビと貝がパソコンに向かっている絵」を見て思わず笑ってしまったこの擬人化の妙、派手な色使い、コテコテの質感といい、大阪風とでも呼びたいパワフルな魅力がある。
ちなみに展覧会場の名前はギャラリーでもアートスペースでもなく、ただ「CANADA」。といっても、マンハッタン、ロウアー・イースト・サイドのチャイナタウンにある。12月にニュー・ミュージアムがLESに再開館して以来、周辺にはギャラリーが続々とオープンし、今もその数は増える一方だが、カナダはニュー・ミュージアムがやって来る前からこの場所で活動している先駆的ギャラリーの一つ。アート・バーゼル・マイアミやアーモリー・ショーにも出展している実力派である。
Michael Williams《Peanut》2009 Oil on canvas 96 x 64 in Courtesy of CANADA
Michael Williams「Uncle Big」展はCANADA で11月22日まで開催。
Words: 塩崎浩子
2009-11-22 at 04:09 午後 in ワールド・レポート | Permalink
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コメント
絵は心を動かしますね・・
投稿情報: ニキビ | 2009/12/22 16:28:25