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2008/08/31
インタビュー:宇治野宗輝
ベルリンからかないみきさんによる宇治野宗輝さんのインタビューです。
東ドイツ時代からの歴史ある自動車修理工場の一角に、新しいギャラリーがオープンする。場所は、プレンツラウアー・ベルク地区。その展示第一弾が、宇治野宗輝の個展「Crossband」だ。家電品などの日用品を使ったマシーンを自らつくり出し、動かし、光らせ、そこから音さえ打ち出す宇治野の作品は、サウンド・スカルプチャーと呼べるだろうか。近年、日本を拠点にアメリカや韓国、中国やインドネシアでの展示やライブ・パフォーマンスを展開する彼は、まさに鬼出電入だ。9月3日のオープニングに向け、既に東京からベルリン入りし、制作を進めている作家と会い、話を聞いた。
ーベルリンでは、今年3月に行われた世界文化会館でのグループ展に続き、2度目の展示になりますが、ベルリンの印象と、この街での制作の様子について教えてください。
最初は、素っ気なくてガランとしたところだなと思ったけど、慣れてくると、この街の味わい深さみたいなものが、分かってきたところです。食べ物とか。今回は、初夏にギャラリーのディレクターからメールをもらって、新しいギャラリーをオープンするの
で、一発目は僕の個展をやりたいと聞き、けっこう急だったんだけどそんなこと今まで無かったし、非常にやりがいがあるので、責任重大ですが、すごくやる気が出ました。いくつかの海外の大都市で仕事をする機会があり、世界の都市は均一になってきている、つまり、どこもそんなに変わりなく暮らせるという印象を受けました。スーパーがあり、ホームセンターがあり、コンビニがある。楽だけど、つまらないですよね。それをモチーフにして始めた作品が、「ザ・ローテーターズ」です。都市の均一化につい
ての作品を作ろうと考えたんです。例えば、どこへ行っても自動車が走っていて、プロダクトとして、微妙に違う歴史があったりして面白いな、とか。ここんとこ、自動車を使うプランが多いですね。今回のギャラリーは、東ドイツの車の修理工場だったということで、またしても車を使ったプランについて話し合っていたら、旧東ドイツのトラックが手に入ると聞き、すごく大変なんですけど、取り組んでます。
旧東ドイツのトラックをいじれる機会なんてあまりないじゃないですか。あとは、アートの運送会社から、クレートをいっぱいもらえる、という話がまとまって「プライウッド・シティー」というタイトルで、中を歩ける小さな都市のような彫刻を作ります。怪獣映画みたいな感じで。プライウッド・シティーっていうのは、まあベニヤ板の都市ということですけど、まんま日本ですよね。でも、こっちの人は何かのモデルとか、何かの隠喩だと思うみたいです。そんな感じで、東と西だとか、東洋と西洋とか、視覚と聴覚とか、ハイとローとか、過 去と未来とか、いろいろな周波数の思考がクロスするイメージで、「Crossband」という展覧会名になってます。全体としてはこの場所の過去と、これからアート・ギャラリーになるという未来をつなぐようなものを作ろうというアイディアにまとまりました。
ーその彫刻で使われる車や家電品は、中古品ですが、新品を使わないことには、どのような意味がありますか?
ひとつは、僕の作品は、一般的な家電のモーター音をピックアップで拾ったりするんですけど、物によってはうまくいかないこともあったりして、制作の過程でいろいろと実験するわけです。そうなると、実験する時に高級なものをいきなりいじり壊しちゃったりすることもあるし、ヴィンテージものを加工してしまうと、その価値を大切にしている人に、申し訳ない気もします。なので、中古品で気を楽にして実験的なことをやっているんです。価値のないものをいじっていて新しいアイディアが生まれるときに、盛り上がるんです。もうひとつの理由は、ドイツも日本もそうですが、最近、いろいろな物がリサイクルされますよね。すべての物質には限りがあると、はっきりと世界中の全員が認識したのが21世紀です。と、いうことは、新品を買っても、材料は中古だと。つまり、21世紀の我々全員が中古主義者だ、ということで、これこそ今のスタンダードなものの作り方なんじゃないかと思ったりもします。
ー海外での展示やライブ・パフォーマンスでは、「観客」がガラリと変わります。そんな時に、特に「日本人」であることを意識されますか?
今みたいに海外で制作している時は、集中してその事しか考えてないので、しかも均一な文化がモチーフなもので、あまり意識することは無いです。日本の自分のスタジオにこもっているときよりちょっと不便かな?くらいで。逆に日本にいるときの方が、こういうアートはなんだかんだいって西洋からの輸入された文化なので、こんなんじゃ海外で通用しない!とか、こんなのアートじゃない!とか他人に言われたりして、日本人であることを考え過ぎちゃったり自主規制してしまったりしていたんじゃないでしょうか。あまり日本でちゃんと発表してないですけど。あ、でも、制作していて段々作品の全体像が見えて来ると、日本らしい軽薄でエクストリームなユーモアを大切にしなきゃ!と、思うことはありますね。ある面日本は世界で最も軽薄な国じゃないですか?そういうのが好きですし。ライブ・パフォーマンスは、展示より自分自身そのものが出ちゃうと思うんですけど、意識する余裕は無いですね。でもどっちも内容はベリージャパニーズだと思っています。
ー今後の活動についても教えてください。
ザ・ローテーターズシリーズは始めてちょうど4年ですが、今第一段階終了という感じです。これまでは、やったこと無いことを成立させるのに精いっぱいだったと思うんです。今は、だいぶ見えてきて、ある所までは完成したと思います。展示では、結果的に、既製品でそっけないインスタレーションになってしまうのは飽きてしまったところもあるので、これからはもっと物質で形を作りたいですね。スカルプチャー!ですね。あと、ザ・ローテーターズの音楽も、そんなわけで、かなりストイックでコンセプトに忠実な感じだったと思うので、今後やるならば、今の、21世紀の、ワクワクするようなものでないとやる意味が無いと思っています。なんだかやることがいっぱいですね。
ーありがとうがざいました。それでは、来週に控えたオープニングを楽しみにしています。
PSM
Ujino Muneteru “Crossband”
9月4日_10月4日2008年
水曜日_土曜日:12am_6pm
オープニング+ライブ・パフォーマンス:9月3日(水)9pm〜
ライブ・パフォーマンス:9月6日(土)8〜9pm
PSM 住所:Strassburgerstr. 6 - 8, 10405 Berlin
2008-08-31 at 11:24 午前 in ワールド・レポート | Permalink
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