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2008/07/07
吉田茂規個展 「Identical Light」
光を撮る
インパクトで目を釘付けにする写真ばかりでなく、秘やかな美しさを放つモノクローム写真に目を奪われることもある。白い壁面に規則的に並んでいた吉田茂規さんの作品である。1997年にNYにわたり、写真の学校に入学した。指導者に恵まれ、写真の面白さにはまったという。会場には2000年から撮影してきた「Identical Light」シリーズが並んでいる。街角の光景、建物の吹き抜け部分、ショーウインドウなどごく日常的風景が写っているが、主役は光であり、光の表情を捉えたものである。
「光自体は実態がなく、何かをリフレクトすることによってはじめて認識されるもの。だからこそ、その存在を写したい。」
どの写真も極めて静謐でありながら、なぜかもの言いたげな印象を受けるのは、「さっきまで人がそこに居たような感じを示唆したい」という思いが込められているからだろうか。
撮られた時が昼なのか夜なのか見分けがつかなくないのは、現像段階で暗めに調整しているため。ディティールを隠すことによって浮かび上がるものがあると考えている。
「人は写真を見る時に、何を撮ったのか、いつ撮ったのか、無意識に問うている。見えない部分があれば、もっとよくそれを見ようとします。」
隠せば隠すほどディティールを探す、という心理を突く。「光」が文字通り「輝き」を放っている場所であるならば、撮る場所はどこでもかまわない。
出先で心動いた光景に出合った時、すかさずシャッターが切れるよう、常にカメラを持ち歩いているそうだ。最も望ましいのは自分が意図したもの以外が写っていること。撮ったものと実際に写っているもの、そのギャップが大きいほどいいと語る。吉田さんにとって、撮ることはドローイング、プリントしたものがタブローという感覚らしい。
今回発表した作品の中で、一番予期せぬものが写っていたのは「34th Street / 7th Avenue」。夕日が撮りたくて人を入れないように写したそうだが、偶然の力を借りないと不可能なことが写っていたと話してくれた。この作品から実際の光景を想像することは困難だが、それでも写した瞬間の臨場感と緊張感が伝わってくる。
彼はかつて版画家としての顔を持っていた。写真への転身はなるべくしてなった結果であり、表現の振幅を広げて充実した制作活動を行っていることを嬉しく思った。
吉田茂規個展 「Identical Light」
東京画廊+BTAP
2008年6月18日(水)〜7月12日(土)
日月曜休
11:00〜19:00(土〜17:00)
入場無料
TEL 03-3571-1808
〒104-0061 東京都中央区銀座8-10-5 第4秀和ビル7階
words:斉藤博美
2008-07-07 at 12:29 午前 in 展覧会レポート | Permalink
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