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2008/05/21
Gallery Weekend Berlin 2008
ベルリンからかないみきさんのレポートです。
今年で4回目を迎え、すっかりベルリンの春の夜の風物詩となった「GWB ーGallery Weekend Berlin」。5月2日から4日までの3日間、街全体がアートフェア会場のように華やぎ、国内外から様々な人が押し寄せた。このイベントは、いわゆる「逆」アートフェア。ベルリンの7つのギャラリーが中心となって運営し、34のギャラリーが参加する。金曜の夜には一斉にオープニングが開かれた。 日も暮れて、青が深く滲みだす空は遠く、ギャラリーの明かりが耿耿と暗闇に浮かび上がる。
主催者は、近頃国外のアートフェアに奔走し、本来のギャラリースペースで過ごす時間が減っていることに危惧をいだき、作家とギャラリー、そしてベルリンのためにできる何か、新しいことを模索していた。そんな時、このイベントの案を思いついたと言う。方法を180度変え、ギャラリーでのショーに観客を呼び込むことを考えた。アートフェアとは異なり、入場はもちろん無料。年ごとに違う、キャッチーなカラーで印刷されたポケットサイズのプログラムには、地図を含め、それぞれのギャラリーの情報が1ページずつ、美術館での展覧会やレストラン、クラブ情報が載る。これを片手に観客は、3日間、思う存分西へ東へのギャラリーウォークのみならず、ナイトライフも楽しめる。このイベントに参加していないギャラリーも、休日を返上して我とはなしに開店。ガイドツアーの他、土曜の夜にはおよそ450人が招かれるディナーパーティーが開かれた。
参加ギャラリーは、アートフェアよりもローコスト、運送や渡航、宿泊費もかからないこのイベントで、自慢の展示スペースだけではなく、倉庫さえも見せることができる。実際に、コレクターを倉庫へ連れて行くアシスタントの姿を何度も目にした。制約の多いアートフェアに比べ、展示の仕方もはるかにフレキシブルになる。殆どのギャラリーが、イチオシ作家による個展をぶつけた。ただ、このイベントは閉じられたサークルの中だけで回っているという印象も拭えない。アートフェアのようにはアプライできず、主催者は「友人」に声をかけているだけだ。(とは言え、どのアートフェアにアプライするにも、コネクションが多々有効なわけだが)これ以上、あまり数を増やしたくないというのも本音のようだ。それでも、この期間をねらって、周辺で起こるイベントは年々増えている。作家グループによるオープンスタジオや、夜な夜な至る所で開かれるパーティー。体ひとつでは足りないほどだ。
9月には、同じ7つのギャラリーが、さらなるイベント「ABC」を企画している。場所は9,000平方メートルにも及ぶ、旧駅の空きスペース。スケールの大きなインスタレーションや映像作品を展示する、アートバーゼルの「アート・アンリミテッド」のようなショーになるとか。これには、75人の作家、40のギャラリーが参加する予定だ。それにしても、止まることのないギャラリー群の勢い。これほどまでに権力を振るう「マーケット」の行く末はいかに。現在開催中のベルリン・ビエンナーレの影が薄いことも気がかりではある 。
2008-05-21 at 10:55 午前 in ワールド・レポート | Permalink
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