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2008/05/01
台北ビエンナーレの新しい試み——台北市立美術館チーフ・キュレーター張芳薇に聞く
台湾から、岩切みおさんのレポートです。
台北ビエンナーレが国際化して、今年でちょうど10年。昨年末には国内外2人のキュレーターも決定し、現時点で半分の参加作家が発表されている。国際展目白押しのこの秋、台北ではどんな展覧会が開催されるのだろうか。第一回展から当ビエンナーレの運営に関わって来た、当館チーフ・キュレーターの張芳薇(ジャン・ファンウェイ)に聞いてみた。
台北市立美術館チーフキュレーター張芳薇 photo by Mio Iwakiri
岩切(以下MI):今回のキュレーターは、トルコ出身のワースフ・コルトゥン(Vasif Kortun)と、台湾の徐文瑞 (シュー・ウェンルェイ aka マンレイ・シュー Manray Hsu) の2人ということですが、まず館として、今年の台北ビエンナーレのキュレーターとしてコルトゥン氏を招いた理由をお聞かせください。
張芳薇(以下FC):台北ビエンナーレ(以下TB)は、98年から今まで行われていますが、中でも、00年から採用されているダブルキュレーター制は、一つの特質だと考えて頂いてよいでしょう。いろんな議論がありますが、この制度を今年も採用したのは、そのためです。もうひとつの特質としては、どの回も、その時々で最も同時代的な、世界と繋がる議題をテーマとしてきたということがあります。
TBは、予算も会場の広さも限られた、中型の展覧会です。なので、テーマ性がポイントとなってくると思います。学術性を持ち、精緻に展覧会を作り上げることが求められる中で、06年のイスタンブール・ビエンナーレを企画したワースフ(・コルトゥン)の名前が浮上しました。オクゥイ・エンヴェゾにも似た、彼の持つ視点の高さが、TBに必要なのではないかと考えたのです。また、台湾側のキュレーター徐文瑞は、00年に続き二回目の担当となりますが、ここ7〜8年ほど海外での経験を積んだ彼の視点もまた、ローカルにとどまらない、一段高いものとなっているはずですから、期待しています。
MI:今回は、初めて会場が美術館から飛び出し、多くの館外会場で展示が行われると聞きました。
FC:そうですね。建国ビール工場、MRTの駅構内や、台北アリーナの電光掲示板などを予定しています。新しい試みなので、多少の手間はかかりますが、経験豊かなスタッフに文化局から出向してもらうなどして、対応しています。これは、出来るだけ地域に密着した展覧会にしたいという、ワースフの希望に基づく試みです。また、参加アーティストの中から、8〜9人が、1〜2ヶ月間台北に滞在し、サイトスペシフィックな作品を製作することになっています。来月にも、2人のアーティストが、ビデオ作品の撮影のために台北に滞在します。彼らはみな、同じ台北市文化局の管轄下にある台北国際芸術村に滞在することになっています。
MI: 前は、同じ台北市文化局関連施設なのに、バラバラに活動しているイメージがありましたが、今回はフレキシブルに協力しあっているようですね。楽しみです。ところで今秋は、アジアで8つの国際展が開幕しますが、ほかの国際展と協力関係を結んだと聞きました。これは具体的には、どういったものになりますか?
FC: 今年は、たった12日間に相当数の展覧会がオープンするという状況です。今回協力関係を結んだのは、上海ビエンナーレと広州トリエンナーレです。共通点は、どの展覧会も美術館による運営だという点です。主に考えているのは、PR面での協力です。お互いの印刷物に、お互いの情報を載せたり、インターネット上でリンクしたりなどがあるでしょう。またこれは計画段階ですが、文化局局長と一緒に上海と広州ビエンナーレを巡るツアーを企画しています。向こうからも同様のツアーがやって来るはずです。
MI: 開幕までの予定はどうなっていますか?また予算についても聞かせてください。
FC: 5月中に行う記者会見で、95%の参加アーティストとテーマを発表する予定です。最終的には、40〜45名(またはグループ)の参加となりそうです。
今年は、幸いなことに、文化局局長が台北ビエンナーレへ理解を示してくれ、例年よりも多くの予算がつきました。現在の時点で、3,400万台湾ドルが割り当てられています。ただこれでも足りないので、おそらく1,000万台湾ドル分くらいスポンサーを募ることになるかと思いますが、なかなか厳しいのが現状です。総予算は、最終的に5000万台湾ドル強というところでしょうね。(1台湾ドル=3.4円/4月30日現在)
MI: 今年の台北ビエンナーレ、いろんな新しい試みに期待しています。今日はどうもありがとうございました。
2008-05-01 at 11:27 午後 in ワールド・レポート | Permalink
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