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2008/02/22
福島淑子 陸の孤島
左)写真:<夢のつづき>2007年
シェル美術賞2007でグランプリを獲った福島淑子さんの個展が、六本木のGallery MoMoで開催中だ。この個展では、昨年と今年のシェル美術賞に出品していたような、人間が複数登場する作品の他に、人物を真正面から捉えたポートレートが出品されていた。
福島さんの作品の特徴は、シェル美術賞に出品していた作品<夢のつづき>に見られるような、浮遊感漂う空間とそこに佇む柔軟な身体の少女だろう。眠っている身体にゆっくり戻っていくような、内面の空間と現実の空間が入り交じる夢のようなイメージ、そして作品から醸し出されるぼんやりとしてつかめない気配が、鑑賞者の不安や孤独に働きかけてくる。個展のタイトルも<陸の孤島>という、周囲と隔絶された空間を思い起こさせるものだ。しかし彼女の作品の魅力は、不安や孤独を想起させられるという部分だけではない。じっくりと絵の前に立っていくらでも作者の痕跡と一緒に過ごしていたくなるような穏やかな気持ちに働きかけてくる。それから端々に見え隠れするユーモラスな細部に気付かされ、いつの間にか彼女の絵の虜になる人が多いのではないだろうか。
どこか怖くて不安になる要素の中には、黒い背景や憂いを帯びた人物の表情にあるのかもしれない。筆跡を追っていくと、迷いやぎこちなさもそのまま現れているように感じる。けれども、迷いの中に落ちていくのではなくて、ネガティブな感情も慈しみ受け入れながら絵を描いているのではないかと想像できて好感が持てる。
自在に曲がったり伸び縮みしたりする少女のような平坦な身体は、外在する空間に身体を制限されながら、その制限の中で自由に動く事を楽しんでいるように見える。奇妙に折れ曲がった脚や、ゴムのように縮んだ細い腕、緊張感と緩和のバランスが人物の関係性に繋がって、物語も感じる。それは、矩形に区切られたキャンバスにどれだけ自由度を発揮できるか、という作家本人の内にあるだろう意思とも重なって見える。
彼女の作品のテーマは、内面の感情と共に、人と人との関係性ではないかしらと思った。一人像でも他者の目線を感じる、個の境界が崩れていくような<こどものおばけ>などは、他者との曖昧な距離が感じられて成功しているように思った。但し、人物と人物の関係性で成り立っている2人像のクオリティの高さと比べると、全身を捉えた肖像画は苦戦しているのか、ファッション誌で見るようなイラストのようにも見える作品もいくつかあった。真正面から人物を描こうとして色々なやりとりをしている最中なのだろう、今後、2人像のようなクオリティになった全身像を拝見するのを期待したい。
右)写真:<こどものおばけ>2007年
そういえば、展示は人物像ばかりではなくて、海の中の生き物ータコやイカのような軟体動物ーの作品や、小品ながら遊び心満載の立体もあって、盛り沢山だった。なるほど海の中のような不思議な重力と、海と身体の境界があわい動物たちに興味があることに納得して口をつぐんで笑ってしまった。黒い背景に溶けていくような滲んだ色の人物はそういえばセーターで隠れて手が見えなかったのだ。
更新が遅れてしまったのだが、明日(23日)まで。23日はちょうど六本木コンプレックスもクロージングだし、皆様合わせてお出かけください。
福島淑子展 陸の孤島
2008年2月2日(土)〜23日(土)
Gallery MoMo
〒106-0032 東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F
TEL 03-3405-4339
words:水田紗弥子
2008-02-22 at 10:37 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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