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2007/12/04
ホーチミン市レポート
ベトナムから、Motoko Udaさんのレポートです。
ベトナムでは、海外事情に精通した一部のアート関係者を除いて、“キュレーター”という職業が認識されはじめたのはここ1、2年のことである。昨今、海外の若手からスターキュレーターたちまで頻繁に当地を訪れる。通常、彼らは数少ないアートスペースに連絡をとり、地元アーティストたちに会う機会を得る。最初は“キュレーター”の役割が分からずに「自分たちにチャンスを与えてくれるかもしれない偉い人らしい」という漠然とした情報のみで集まってきたアーティストたち。そのうち彼らの中から幾つかの疑問がわき始める。「何故、いつも同じアーティストが選ばれるのか?」「何故海外国籍のベトナム系アーティストたちがいつもベトナムを代表するのか?」「面白い企画はいつも海外で実行されて、地元のアートシーンの活気につながらない。これでいいのか?」
1) 会場風景@Titan Visual Café
この疑問を誰よりも強く感じ、積極的行動にでたのが、今回ご紹介する「Art in Marathon」のキュレーターを務めるグエン・ニュー・フイ(Nguyen Nhu Huy)である。彼はハノイ出身、ホーチミン市在住のビジュアルアーティスト・詩人・美術評論家である。かつては、制作に専念していたが、ベトナム美術界の批評家の不在に危機を感じて独学で評論を発表しはじめる。2003年NYでレジデンスの機会を得てからは海外アートに関する論文などを翻訳してウェブ上で紹介するなど、ベトナム南部若手アーティストのリーダー的存在となる。その彼がハノイ市のTran Luong(チャン・ルオン)氏以外にベトナム人キュレーターがいない事に危機感を持ち、経験を積むために向かったのが韓国・安養市だった。2006年、ここでキュレトリアル・プロジェクト「Xin Chao, My Darling」を発表し、16人のベトナム人アーティストの作品を紹介。帰国後、彼は国内外で精力的に実践の場を踏む。そして今年9月20日から11月11日にかけてホーチミン市で実現したのが「Art in Marathon」である。ヒミコ・ビジュアル・サロンとタイタン・ビジュアル・カフェを会場として4日間に渡って4チーム
Bao Ngoc & Nam An
Nguyen Kim Hoang & Thao Nguyen
Le Quy Anh Hao & Ly Doi
Ngo Van Luc & Ngo Dinh Truc
の作品を紹介。ゲストアーティストとしてPham Huu Thanh, Tran Thanh Chung, Le Vo Tuan, Bui ChatとキュレーターのNhu Huy自身も参加。絵画、インスタレーション、ビデオ・パフォーマンスはいずれもインターアクティブな作品で会場は連日賑わいをみせた。
2) Art in Marathon招待状
若手アーティストにとってキューレーターとコンセプトについて語り合い、展覧会を築いて行く過程は新しい体験だったようだ。言葉の壁が無い分、アーティストたちも“海外うけ”を意識する事なく、積極的に“今の自分たち、今のベトナム”をどう表現するか意見を出し合えたそうだ。キュレーターNguyen Nhu Huyの活動には地元アーティストの意識革命という点からも今後益々注目していきたい。
「Art in Marathon」の詳細は多くの写真とともに下記のウェブログで紹介されている:
3) ビデオ作品上映会風景@ Titan Visual Café
http://blog.360.yahoo.com/blog-TD3GUu4wabJ6HLrOWHLkzWKRn1_k
グエン・ニュー・フイ(Nguyen Nhu Huy)のウェブサイト
掲載画像すべて Courtesy of Nguyen Nhu Huy
2007-12-04 at 08:50 午前 in ワールド・レポート | Permalink
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