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2007/12/17
「ニュー・ミュージアム」 がダウンタウンにオープン
NYから、塩崎浩子さんのレポートです。
12月1日、マンハッタンのダウンタウンにニュー・ミュージアムが再オープンした。1日の正午から翌2日の午後6時までの30時間無料で一般開放され、近所に住んでいる私は夜中12時近くに出かけてみた。翌朝は初雪が舞う寒い日だったが、オープニングは大勢の人でにぎわっていた。
美術館外観。ファサードに設置されているのはUgo Rondinoneの作品「Hell, Yes!」
美術館の設計を手掛けたのは、妹島和世と西沢立衛のSANAA。銀色に光るアルミニウムのメッシュでおおわれた外装、大きさの違うバラバラの箱をずらして重ねたようなユニークな外観は、業務用調理器具の問屋や古いビルが並ぶ通りでひときわ目立つ。巨大なエレベーターで上のメインギャラリーへ。天井が高いものの窓はなく、簡素で無機質な内装、柱や仕切り壁がなくびっちりと照明が行き届いた空間は、まるで巨大なコンテナのよう。中に長くいるとやや閉塞感を感じるほどだ。しかし、安易な居心地の良さを排除したこの無機質でラフな空間こそが、ニューヨークのダウンタウンという立地、そして新しいアートの発信地としては似つかわしいようにも見える。
美術館の入り口は大きなガラスの壁になっていて、通りからも中がよく見える
再オープン記念展は「Unmonumental」(2008年3月23日まで)。レイチェル・ハリソン、ヨーン・ボックら30人のアーティストによる、廃品やがらくたから作られた100を超す立体作品が雑多に床に置かれ、コラージュ、音響、インターネットといった異なるメディアの作品が時期をずらして重ね合わされていく、美術館のかたちをなぞらえたような発展型の展覧会である。展示が今後どう変化していくのかは分からないけれど、「非ーモニュメンタル」というそのタイトルに、恒常的な、あるいは不朽の作品ではなく、常にアップデートされ、進化し、ダイナミックに形を変えていくアートの今をとらえようとする、この美術館の一貫した心意気が感じられる。
1階にはブックストアやカフェ、ガラス張りのギャラリーがあり、通りに面した大きなガラスの壁が外側との境目をなくし開放的で気持ちがいい。カフェにはいろいろな種類の椅子が雑然と置かれ(ちょっと意図的すぎる感じもあったけれど)、ラウンジ・ミュージックがかかるさまは、洒落たデザインストアのよう。訪れる人もソーホーやノリータを歩いているような若くておしゃれな人が多い。
ダウンタウンのアートの拠点となるであろうこのニュー・ミュージアムのオープンをきっかけに、周辺にはギャラリーやアートスペースが続々と誕生している。古い店や小さな店が「For Rent」となり、ギャラリーがとって代わるのを頻繁に目にするようになった。今はまだ小規模のギャラリーが多いものの、最近ではFeatureがチェルシーから移転し、Lehmann Maupinがセカンドギャラリーをオープンした。
バワリー・ストリートのビルに掲げられているビレッジ・ボイス紙の看板
この辺りの雰囲気はここ2、3年でがらりと変わってしまった。ホテルができ、コンドミニアムが建ち、高級グルメスーパーがやってきた。美術館が建つバワリ−・ストリ−トは、かつてはジャンキーやホームレスがたむろしていた場所で、ウィリアム・バロウズが居を構えたのもここだった。数年前ですらちょっとやばい空気が漂っていた場所だったのだ。通りに掲げられた「ジャンキーたちはどこへ行った?」と描かれたビレッジ・ボイス紙の大きな看板を見て、あまのじゃくなのかも知れないけれど、そのあまりの変貌ぶりに少し複雑な気持ちを抱いたのだった。
ニュー・ミュージアム(The New Museum)
2007-12-17 at 02:48 午後 in ワールド・レポート | Permalink
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コメント
どこかで見た建物だなぁ~と画像を眺めているうちにすっかり記事に見入ってしまいました。
更新たのしみにしてます^^
投稿情報: 耳つぼダイエット実践中☆ | 2008/01/01 22:19:36