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2007/07/26
アートの大家族
台湾から、岩切みおさんの7月のレポートです。
会場となる、ナンシー・アタカンの実家のお店
Photo courtesy of Good Gangsters
最近、台湾から出て行く美術関係者が増えた。大陸(北京や上海)、アメリカ、ヨーロッパ… 。大陸へは、チャイナフィーバーの影響で、「とにかく行ってみよう」という、アメリカン・ドリームならぬチャイニーズ・ドリームの追求が目立つ。欧米へは、近年の日本と同様、レジデンスプログラムへの参加をきっかけに、世界の舞台へ活躍の場を広げて行こうとするアーティストら美術関係者の動きが頻繁に見られるようになった。
20代最後の夏を、イスタンブール・ビエンナーレの提携イベント「ビッグ・ファミリー・ビジネス」の企画に捧げているキュレーターの卵、エスター・リューも台北を後にしたひとりだ。これまで台北ビエンナーレ、上海ビエンナーレなどの展覧会アシスタントを務めてきた彼女は、昨年、キュレーター・イン・レジデンスに参加するため、単身スウェーデンへと旅立った。そして、同じプログラムで知り合った若手トルコ人キュレーターと意気投合、Good Gangsters (善良なチンピラたち)というチームを作り、イスタンブールでの企画を温めはじめた。
エスター・リュー
Photo courtesy of Esther Lu
「ビッグ・ファミリー・ビジネス」は、中東や中華圏という、大家族文化が残る地域出身である彼ら自身のバックグラウンドとも無縁ではない。また、彼らは、アート界そのものを「ビッグ・ファミリー」的なものだと考えている。あるアーティストが別の土地に行ってプロジェクトをする時に、誰かが宿泊場所を提供してくれたり、ボランティアで手伝ってくれたり… こういう現象は、アート界でしか起こらないのではないか、とエスターは言う。もちろん予算がないなどのマイナス面がそういった面を生み出しているわけだが、このような「家族的」な要素に注目したのが、このプロジェクトだ。
具体的な活動は、第10回イスタンブール・ビエンナーレが開幕する9月8日の前後約1ヶ月間、この街を訪れるアーティストやキュレーターなどの関係者たちに、討論や交流のプラットフォームを与えようというものだ。場所は、IMCというビエンナーレ会場内。イスタンブール出身のアーティストナンシー・アタカンの実家が経営していたミシン店の店舗跡を借り受けた。現在予定されているプロジェクトは、トーク、セミナー、スクリーニングなど、すでに20数個に及んでいる。アーティストのプレゼンテーションにはまだ空きがあるということなので、この時期イスタンブールを訪れる予定で関心のあるアーティストは、ウェブサイトを通じて彼らに連絡してみるのもいいかもしれない。なお、このプロジェクトは、ビエンナーレの提携プロジェクトとして公認を得ているそうだ。
彼らのプロジェクトは、今のところトルコ美術界との交流はほとんどなく、英語の通じる「インターナショナル・アート・サークル」だけを対象にしているという欠点もあるが、こうやって、アートの「ビッグ・ファミリー」がますます大きく、親密になり、新しい形での交流が進んで行くのは、決して悪いことではないと思う。エスターのように、北欧という土地で、中東の友人に出会い、またそこからさらに世界を広げて行くやりかたは、単に台湾の現代美術を世界に売り込むという、従来の一方的なやりかたとは全く違う新しい方向性を持っている。来年は、Good Gangsters の第二弾として、ストックホルム、イスタンブール、台北の三都市で展覧会を企画中だとか。楽しみだ。
BFB: ビッグ・ファミリー・ビジネス
2007.9.3〜10.5
プロジェクトHP: http://www.bigfamilybusiness.net/
2007-07-26 at 01:00 午後 in ワールド・レポート | Permalink
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