銀座エルメスの天上に異変あり

〈横浜トリエンナーレ2005〉では横浜中華街のど真ん中に「ホテル ヴィラ 会芳亭」を出現させ話題をさらったドイツ在住のアーティスト西野達（西野達郎から改名）。今度は銀座のど真ん中、メゾンエルメスの屋上にけっこう小市民的なペントハウスを出現させた。

「天上のシェリー　西野　達」展
６月２日（金）〜８月31日（木）
メゾンエルメス８階フォーラム
（東京都中央区銀座５−４−１　エルメスジャポン）
会期中無休
（但し、６月21日、７月５日、７月19日、８月16日を除く）

一人暮らしのワンルームマンションのような作りの部屋にはベッド、タンス、机、ローテーブル。ベッドの上には騎馬像がデ〜ンっとあり、旗の代わりにエルメスのスカーフがとりつけられている。ベッドの上の騎馬像にはもちろん驚くが、そこまでの途上のほうがさらに印象的だった。８階までエレベータで上がると、狭い通路や階段を進むことになる。ガラスブロックから昼間は太陽光をいっぱいに受ける展示室には白い壁がたてられて、内側には（多分）何もない。階段そのものはナンの変哲もないのだが、踊り場から眼下に見える銀座の街は、歩道を歩いているときとは、まったく違って見える。工事用のイントレ（足場）を組んだ造作そのものが、「エルメス」という高級ブランドのイメージとギャップがある。吹きさらしの地上数十メートルの景色は、東京タワーの見え方も、何もかもいつもの銀座の景色と違って見えた。エレベータを降りてからペントハウスへと続く道のりの興奮と、天上にたどりついたときに目の前にあるフツーの暮らしの風景とのギャップにおかしみがある。（原）