COUMA テーブル テニス プレイヤーズ展

「日々卓球あるいはアート」

左：練習の合間にドローイングの続きを描き込む／右：オートマチックマシーンロボ！

巨大なラケットの作品がある1階スペースに軽快な音が響く。階段を上がり2階のドアを開けると、部屋のまん中に置かれた卓球台でいつも誰かが試合をしている。といってもそこは卓球の練習場ではない。仲川あい、飯川雄大、金氏徹平、木村友紀、法福兵吾、鶴林万平ら六名のアーティストが結成した“COUMA”の展覧会。1日にスタートして以来、卓球のプレイを通してひらめくものを公開制作しながら発表してきた。

　メンバーは小さな球と小さなコートで繰り広げられる卓球というスポーツの世界に少なからず特別な熱い思いを持っている。音、スピード、ラケットに球が触れる感触、速球を捉える動作...プレイの中で鋭敏さを増す身体感覚からそれぞれが得た新鮮な感覚とひらめきの産物は日ごとにこの空間に追加されていく。足を運ぶ度に会場の様子が変わっていて、増殖するように作品が増えている。先日は、最後のオチの部分だけを来場者が作る4コママンガも展示に加わっていた。もちろんネタは卓球。

　オレンジ色のボールとイメージがリンクする鮮やかな橙のみかんの木の写真作品、卓球をする様子を描いているが、にじんだ色が輪郭線を曖昧にしているドローイングなどをはじめ、今では作品はそこらじゅうにある。かわいらしい顔が描いてある練習用コントロールマシーンには思わず笑った。オートマチックに飛び出す球がラケットに跳ね返されてはボールを溜める容器に回収されるように加工してあるのだ。

　卓球台の下を使った展示は特に面白い。床に設置された鏡に、卓球台の底面に貼った写真やドローイングが映る。作品をよく見るために屈んだり視線を下に落としたりしているすぐそばで、ふたりのプレーヤーが真剣な面持ちで対戦しているのだから、端から見るとなんとも奇妙な光景だろう。

　声をかければ卓球への参加も可能。毎週土曜にはイベントを開催している。12日のプロ・プレイヤーの試合では、サウンド・音響システムが迫力ある試合を一層魅力的なものにしていた。ボールが台の上を跳ねるたびに電子音が鳴るのだが、双方汗の流れ出るほどの緊張感ある真剣勝負とは裏腹に、球の往復するリズムがなんとも耳に心地よく、まるでアンビエントミュージックでも聴いているようなのだ。

　初期から展示されているものに、参加メンバーそれぞれが撮影した卓球ボールのある風景写真のシリーズがある。球の行方をひとつずつ想像する楽しさは、最終日にはいったいどうなっているのかと期待が膨らむこのプロジェクトと同じだ。26日には、会期中の作品をまとめた発表会、その後深夜まで、魅惑の「卓球バー」も営業。この1ヶ月の集大成、ディープな卓球の夜になるに違いない。

テーブルテニスプレイヤーズ展
2005年2月1日（火）〜2月28日（月）
art project room ARTZONE
京都市中京区河原町三条下ル一筋目東入る大黒町44VOXビル1、2階
12:00〜20:00
会期中無休
075-791-9382

words: 酒井千穂

練習試合中
会場風景
オチを考える未完成卓球四コマ