2005/01/21
金沢にBABA荘あり
「居住空間で見る映像空間」
左:高木哲「africa」より
右:小林耕平「1-2-2」より
1月13日、金沢21世紀美術館に行った。その報告をと思いつつ、金沢市内のオルタナティブスペースでの展覧会が23日までなので、先にそちらを紹介したい(報告が遅れてすみません)。金沢21世紀美術館も楽しめたけれど(県立美術館にも行きましたが)、個人的にはこの場所が一番のびのびと作品を見られました。
BABA荘とは、大阪から金沢に移り住んで10年になるという亀井岳という作家の住居を兼ねたアートスペースで、2階建て木造の古い下宿屋のような造り。年月の経ち具合はかなり残したまま、改装を施している。今回の出品者でもある、キャンディファクトリーなどのユニットで知られる高木哲とともに、オープン前はフリーペーパーを発行していて、展覧会は今回が3回目。1階の3部屋を一部屋ずつ使い、小林耕平、 TANY、 高木哲の3人の映像作品を紹介している。すべての部屋にドアがあり、スクリーンがキッチンシンクの上に張られている。部屋のつくりは同様で、ある部屋はソファ、ある部屋はベッドという違いはあるものの、極力シンプルなインスタレーション。小林耕平は「シネコン」と言ったが、その似たような部屋を出たり入ったり反復している自分もなんとなく可笑しい。映像を見るための部屋をつくりこむのではなく、映像によって部屋の気分を変え、ここはどこだ?という気持ちにさせる。
フィリップモリスの公募展で前恋人の会田誠を襲う映像作品で大賞を取ったTANY。新作の「fever」は、絵を描く行為はマスターベーションという欲望の代替行為に通ずとばかり、エッチでおバカになだれこむ痛快作だ。高木哲の、サファリパークで撮られた「africa」は、実際の草食動物と肉食動物を隔てた柵をフレームに入れずに、あたかも本物のアフリカを撮ったように見せている。柵は見ないことにして、人工的なテーマパークに「アフリカ」を見て欲望を満たす観光客の都合のいい想像力をなぞり、これまた人工的な映像のなかで「自然」を実現させている。映像は嘘をつく。見る人がだまされるか、あるいはあえてだまされて見るかということより先に、映像自身、これが嘘だよーということをなにか嗅ぎ取らせてしまうものだ。あの感じってなんだろう。とすると、小林耕平の映像が一番映像らしい(あるいは映画らしい)嘘なのかもしれない。シャツを切ったり、雑木林のような場所で吊るされたビニール袋の小さい穴から水が弧を描いて飛び出したり、意味深で脈絡のない場面が不穏に続く「1-2-2」。実験なのか儀式なのか。以前は理性的に枠組みをつくり、その規則性からはみ出すものも含めた映像という印象を受けていたのだが、この先映像そのものがもつ怪しさに足から浸かっていくように見えた。裏テーマは「欲望」なのか、三人三様のバランスもよかった。
小林耕平 TANY 高木哲展
2005年1月14日(金)〜23日(日)
BABA荘
石川県金沢市小立野3-2-15
15:00〜21:00
会期中無休
TEL.076-260-7383
words:白坂ゆり
2005-01-21 at 03:16 午前 in 展覧会レポート | Permalink
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