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2005/01/12
小谷野夏木展
「見ることが声になる。空間を意識する」
作品に呼ばれて、もう一度振り返るようなことがある。鹿や、顔を何かに覆われた人の絵に、なんとなくそんな気がした。
絵の間には、ただ茶色に塗られた、あるいは緑に塗られた絵もある。それは、何が描かれているのかという内容よりも、絵肌といわれる表面のニュアンスを見ざるを得ない。そうすると、鹿や豚、人とわかる絵も、それの意味するところではなくて、そこから感じられる空気や感情を見るような、絵が発するものを聞き取ろうという気持ちになってくる。
イメージをかき立てる絵と、絵具という物質を意識させるものとしての絵が配列されているのかと思うが、どちらにも双方がもつ要素があり、絵との距離を変えながら、目の行き来によってそれらがだんだん混ざり合った森のなかにいるような気になった。それでいて、空間の白さもくっきり印象に残っていて、簡単にトリップさせるのではなく、それが絵である事の現実みたいなものを感じた。
引きで見るとちょっとセンスのいいインスタレーションにも見えるのだが、初個展からいろいろ試すなかで、絵に向かう気持ちが少しずつ美を結んでいるように思える。
それから、彼の絵は、見る人にそれとなく恐怖の気配を察知させているようにも思う。鹿の耳が立つように、人が小さく声を挙げたときのように、かすかな恐怖は人の感覚を研ぎすまさせる。絵のつくりかたに、どこか映画づくりを思い起こさせる。
小谷野夏木展
2005年1月5日(水)〜15日(土)
Space Kobo & Tomo
東京都中央区銀座1-9-8奥野ビル地階
(銀座一丁目駅10番出口よりドトール前の三原通りを京橋方向へ、徒歩2分)
12:00〜19:00(最終日17:00まで)
無休
TEL.03-3538-3250
words:白坂ゆり
2005-01-12 at 04:15 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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