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2004/11/24
金氏徹平「小動物と大洪水」
漂う境界
■ 集めたものが大きなひとつの集合体になることで、最初にあったひとつひとつの個性が消え、全体をなす単純な一要素になる。集まるにつれて希薄になっていくモノの輪郭や境界線を、金氏徹平さんはコラージュや写真などの方法で新たに再構築してみせる。
■ 全体的に茶色っぽい色のコラージュは、近づいてみると 一枚ずつ “シミ”で色がつけられていた。コーヒーや紅茶、緑茶などでにじませたという紙は、にじみの輪郭線に沿ってとても丁寧に切り取ってある。ところどころに印刷物から切り抜いたキノコの写真や、プラスチック、フェイクファーのおもちゃなど異素材も混じっている。
■素材そのものは目新しいわけではない。けれど、流れる液体の輪郭を重ねて作られたかたちは、全体的に見るとなんだかグロテスク。実際に少し離れてみると密集した大きなキノコの株のようにも見えてくる。
■ 机の上に、2体を合体させて上半身を白いゴムで覆った小さなフィギュアがたくさんあった。本当はどれも違うキャラクターなのだろうが、白く覆われた顔の部分には、まるで子どものイタズラのように新たに目や口が描き加えられ、ユーモラスな白いキャラクターのシリーズが並んでいるようだ。他に、水滴で線がにじんでどんな場面なのかは定かでないが、サッカー選手の集団をモチーフにしたドローイング、はじめての映像作品もある。
■ 水滴のにじみが最初にあった線をぼかし、侵食するように大きなまとまりをつくる。逆に、たくさんの液体のシミの重なりは、小さなものをのみ込む濁流のよう。近づいたり離れたりしながらじっくり見てゆくと、曖昧になっていく輪郭の間を漂うようにイメージも移り変わっていてハッとする瞬間がある。
金氏徹平「小動物と大洪水」
2004年11月13日(土)〜12月25日(土)
児玉画廊
大阪市中央区備後町4-2-10丸信ビル2F
(地下鉄本町駅2番出口より北西へ徒歩2分)
11:00〜19:00
日祝休
Tel:06-4707-8872
words:酒井千穂
2004-11-24 at 11:48 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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