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2004/03/13

大阪・アート・カレイドスコープ「OSAKA 04」

「美しいものは美しい」 


201_04_1村山留里子「No title」シリーズ 2004
協力/ユミコチバアソシエイツ、協賛/株式会社七彩


■うららかな春の空気を感じるようになってきた。日中の陽射しに誘われて、外を歩きたくなるこの頃、大阪で素敵な催しが始まった。美術だけでなく演劇、デザイン、建築などさまざまなジャンルの表現の相互交流を促そうという大阪・アート・カレイドスコープ「OSAKA04」は、ふたつの会場での展覧会をメインに、期間中、音楽、ダンス、パフォーマンスのライブ、シンポジウムなども開催される。

■展覧会では12人の作家の作品を紹介している。現代美術センターの「花のリビングルームをイメージさせる展示室」には、色とりどりのビーズや造花をぎっしりとつけた村山留里子のビスチェ、雌しべのある中心へ引き込まれるように花をクローズアップした古巻和芳のペインティング、穏やかな色合いの押江千衣子の作品が並ぶ。中央には、座ると大人でも足がぶらぶらする巨大な椅子とテーブルがあるが、こちらは家具制作を手掛け、カフェやギャラリースペースも運営する大阪のgrafが制作したものだ。

■もうひとつの展示室には70年代にニューヨークで始まった美術運動、パターンペインティングの作家、ロバート・クシュナーの油彩。現代美術の紹介だけではなく、こちらには、19世紀フランスの宮廷画家、ルドゥーテの綿密に描いた花のリトグラフもある。

■現代美術センターからすぐの地下鉄1本で向かえるギャラリー、海岸通CASOが第二会場。入ってすぐのスペースには、アラーキーこと荒木経惟の写真、柔らかい色彩の金田実生の紙に描いた油彩作品、いくつものしっぽのようなものが壁から出ている韓国のアーティスト崔辰旭(チェ・ジヌク)の作品などが展示されている。

■入ったとたんに石鹸の香りがする空間は稲垣智子のインスタレーション。オペラのの歌声が響くこの空間には、石鹸でできた白い彫像が並び、天井からは沢山の花が垂れ下がっている。ひとつの壁面には花の散る映像、別に、バスタブで若い女性が歌いながら石鹸の彫像の「からだ」を洗い、彫像がどんどん溶けてゆく映像もある。見る人に物語を紡がせるように、石鹸、歌声、散る花といった要素それぞれが少しずつ繋がりを持っている。

■銅金裕司の作品空間では、所狭しと並ぶ沢山のアレカヤシから発信されているかように、コンピューターの不思議な声が繰り返し流れている。名和晃平は水槽の水面に泡がぼこぼこと発生するPixCellシリーズと、発泡スチロール、発泡ポリウレタンでつくった新作も発表。ガラスと陶を合わせた田嶋悦子の作品は8点展示されている。

■ところで、この展覧会にはカタログがあり、眺めるのが飽きない程とても綺麗な写真の数々で構成されている。後半部分の"KANSAIをつくる50人"というページは、美術だけでなく、建築、音楽、伝統芸能まで、さまざまなジャンルで活躍する関西から登場したアーティスト達を紹介している。これまでになかったかたちの展覧会カタログだ。

■学生の頃、先生達が「話す時でも書く時でも、美しいという言葉は使わないようにしている」と言ってうなずきあっているのを目にした。やたらに口に出すと真実味が薄れるという意味なのだろうと理解したが、それ以来「美しい」という言葉を使うのに私自身が若干身構えるようになってしまった。けれど、この展覧会は、素直に「美しい」と口にできるし、純粋に美術って楽しいなあと思えて気持ちがいい。近頃、外へ出るとあちらこちらに花の香りが漂っている。春の息吹きを満喫しながら華やかなアートも堪能して下さい。


大阪・アート・カレイドスコープ
「OSAKA 04」

2004年3月13日(土)—3月31日(水)
●大阪府立現代美術センター
大阪市中央区大手前3-1-43大阪府新別館北館・南館
(地下鉄谷町線・中央線「谷町4丁目」駅下車、1A出口方向へ徒歩3分)
tel.06-4790-8520
●海岸通 ギャラリー・CASO
大阪市港区海岸通 2-7-23
(地下鉄中央線「大阪港」駅下車、6番出口より徒歩5分)
10:00〜18:00
日曜休
入場無料
tel.06-6576-3633

words:酒井千穂

201_04_2graf「Meeting Table」2004
座ると小人になったよう。


201_04_3古巻和芳の作品


201_04_4崔辰旭「in reality but not in name」1996、
「itinerary of extinction 」2004


201_04_5稲垣智子「春」2004 
会場にはオペラの歌声が響く。
協賛/エプソン販売株式会社、牛乳石鹸共進社株式会社


201_04_6銅金裕司「ヴォイ スプラントロン2004」
沢山のアレカヤシの空間は林のよう。


201_04_7名和晃平「VoxCell」2004
発砲スチロールの作品

2004-03-13 at 01:14 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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