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2004/02/14

森田浩彰展

「星が移り変わる」

art199_04_1Contemporary Stars


■白い壁にランダムにはめ込まれた粒が1秒おきに点滅していた。全部が点滅しているのではなく、していないものもある。よく見ると、近くにあるデジタル時計の表示と同時についたり消えたりしている。壁にはめ込まれている粒も、時計に使われる96個のLEDをひとつずつに解体したものだった。

■ランダムに配置されたLEDも時計そのもので、時間を伝える表示装置がバラバラになっているだけなので、その時は点灯していないものも、時がくれば必ず光る。同じ数だけ同じ瞬間に発光するという規則正しい運動を繰り返しているが、刻刻と過ぎる時間を目で確かめることができるデジタル時計とは違って、ひとつずつに解体されたLEDの方は何時かもわからず、時計としての機能性はない。同じものなのに、ただ、赤い光が点滅している物体に見える。

■壁にはもうひとつ密やかに示されているものがある。LEDよりもほんの少しだけ大きいネジが回転している。とてもさり気ない上に動きに歪みがないので、作家の森田さんに言われるまで全く気がづかなかったが、「Into the wall(clock wize)」というこの作品は、一秒ごとに点滅を繰り返す赤い光のあいだで、まさに時計の右回りの秒針のように60秒で一回転していた。

■奥のスペースには、有名なサッカー選手が試合で活躍する一瞬を収めた写真にLEDをはめ込んだ作品が並ぶ。星座に興味があるのだという森田さん。作品にはスター選手と星座のイメージをかけた言葉遊びのような楽しさもある。けれど、その光が届くまでに何光年とかかり、燃焼して消えてしまった星の輝きですらも目にうつる天体に思いを巡らすと、スターという言葉の響きに果敢ないイメージが重なっていくのも感じた。

■森田さんの作品を見ていたら、養老猛司の『バカの壁』に「万物流転、情報不変」という項目があったのを思い出した。会場のデジタル時計は淡々と時を刻んでいるが同じ運動を延々と繰り返す外側で、ずっと眺めていても気がつかなかった事実に新鮮な驚きを感じたり、新たなイメージが発生していく時間があった。何も変化していない連続に見えて、ものごとは限りなく移り変わっている。

森田浩彰個展
2004年2月14日(土)〜2月28日(土)
ギャラリーツインスペース
大阪市北区天満4-1-2天満佐藤ビル1階
(京阪「天満橋」駅より徒歩約10分)
13:00〜20:00(土曜日19:00まで)
日曜休
入場無料
TEL.06-6352-6903

words:酒井千穂

art199_04_2

art199_04_3時計表示と同じ数だけ、同時に壁にはめ込まれたLEDが点滅する(Contemporary Stars )

art199_04_5New Constellation シリーズ

art199_04_5

art199_04_6会場風景

2004-02-14 at 03:21 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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