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2004/02/28

森千裕展

「おさまりきらないもの」

mori_1会場風景


■"美術"には、なにかの定義におさまりきらない表現をも受入れてしまうような度量があると私は信じてきた。しかし、そんな美術の仕事に関わる人すら、自分のものさしに合わないものや、これまで信じてきたものから逸脱する作品を拒絶することが時にはある。森千裕はまだ現役の学生だ。彼女しか見えないものをかたちにしようとする方法として、絵画やオブジェやレディメイドのタンクなどを用いて制作している。1枚の絵に表現されたもの、いくつかをまとめて観たときに浮かび上がる気配など、イメージが重なりあって、観ていくとワクワクしてくる。だが、前者のようなタイプの人から作品を理解することを拒まれた経験もあったようだ。

■床に散乱させたような展示の複数のドローイングと、ポリタンク、コップ、顔料で表面を覆ったモモンガのような生き物ふうのオブジェ。そして、壁にもドローイングが並ぶ。1枚ずつのドローイングは、それぞれに独立した作品ととれるし、むしろ相互の関係を考えていこうとすることに深い意味を見出そうとしないほうがいいようにも思われる。

■コップの水、そしてあらゆるものを飲み干そうとするように口を開いたままの顔。モチーフとなっているものは、やはり繋がってゆく部分がある。部屋の隅に張り付くように留まっているグレーのモモンガ。巨大な爪、ダイヤモンドのタブロー。正面には、食肉牛が頭を一列にして並んでいるモノクロのタブローがある。これらが指し示す意味や内容を考えようとすると、深読みしすぎそうになったり、だんだん混乱してくるけれど、そこがまたゾクゾクさせる。

■「一筋縄ではいかない」という表現がぴったりの作品かもしれない。ダイヤモンドも観ているとトリップしそうなディメンションがつくられているし。ツメの作品は細部の描写が、一つの「爪」という世界から別な世界へと誘うような描き込みがなされている。「これらの作品はなに?」という質問にはうまく一言では回答できないのだが、じっくり観てゆきたい作家がまたあらわれた。

Kodama Gallery Projects 03
森千裕
2004年2月28日(土)〜3月13日(土)
児玉画廊
大阪市中央区備後町4-2-10
(地下鉄御堂筋線「本町」駅下車、徒歩5分)
11:00〜19:00
休廊日/日曜日、月曜日、祝日
入場無料
TEL 06-4707-8872

words:原久子

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2004-02-28 at 01:48 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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