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2004/02/02

安田丈治展

「間にあるもの」


art198_01_1世界を表す玩具のようだ


■相似形の積み木のようなものは、外側と同時に内側に、同じ場所も時間も空間も存在していることを塊として形に表したもの。目に見える外側の表層と同時に隠れた内側を、そしてその間にある厚みを想像してみよう。この展覧会は、ウエハースみたいな、世界の仕組みを表す模型のような写真で始まる。

■ギャラリー空間の中に暗闇の箱がある。入ってみるとモニターには、森を背景にうさぎと熊のぬいぐるみが全身を垂れて映っている。中に穴があり、手を入れてみると、モニターに映っているぬいぐるみの身体の内側に手を入れたことがわかる。動かすとモニターに映るぬいぐるみもリアルタイムで動く。外に回り込んでみると、箱の表面にプロジェクターで森の映像が投射され、ぬいぐるみが垂れていた。動いたぬいぐるみは、別のデジカムで捉えられていてそれが内側のモニターに映っているのだ。つまり、外側で起きていることが同時に内側のモニターで見えるという仕掛けだった(なるべく同時性を表したいので、ズレを表す表現として使われる<録画>が送信されているのではない)。

■一人で試すと、自分で動かした外の様子を中のモニターで確認することになる。それだけでも表層と内部をいちどきに見ることになるのだが、そこへ他の人がやってくると、ボックスの前を横切る姿もモニターに重層的に映ってくる。あるいは急にぬいぐるみが立ち上がって外の人に働きかけることになったり、外の人が何か働きかけてもモニターに映るので、内側と外側の動きを共時的に目にすることができる。いろいろな人が偶発的に起こすことが同時に重なると、その間にあることが厚みをもってきて面白いはずだ。

■ただ、もし自分が働きかけなくても世界は動いているとしたら、森の映像は動いていた方がいいんじゃないだろうか。でも、関わらないと間(あいだ)は生まれないってことかな。また、ぬいぐるみの動ける範囲が少ないのは少し不自由な気がする。

■それともうひとつの作品。2つの山の立体があり、白は外側で、黒は内側を型取りしたものだ。山は、作家が生まれた近くのもので、思い出というわけではないけれど、ちょっとした自分の楽しみでつくった感じを、机の上にものとして置くことで出している。

■内と外、物質と概念、意識と無意識など、大切なことは、一つでもなく、二つに一つを選ぶのでもなく、その間にあることから何を想像/創造するかなんだろう。


安田丈治展
2004年2月2日(月)〜8日(日)
トキ・アートスペース
東京都渋谷区神宮前3-42-5サイオンビル1F
(外苑前駅よりベルコモンズを右折、キラー通りをはさみワタリウム美術館斜め前)
11:30〜19:00(最終日〜17:00)
水曜休
TEL 03-3479-0332

words:白坂ゆり

art198_01_2


art198_01_3手を入れてぬいぐるみを動かすと同時にモニターに映る


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art198_01_5箱の外側。


art198_01_6この人影は、箱の中のモニターに映っている。


art198_01_7黒い山の方は見えにくくなっているが、表面には、白い山の内側のFRP樹脂の繊維の跡がある。


2004-02-02 at 03:29 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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