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2004/02/03

大西伸明展

「制限の中の限りない微妙」

art198_04_1会場風景


■鮭の切り身、卵、蚊取り線香など、生活の中で目にするものばかりが白いテーブルの上に並んでいた。樹脂で作ったものに手描きの彩色がしてあり、だんだんと色が薄くなって樹脂の半透明、透明の部分を見せている。京都文化博物館で現在開催中の「美術工芸新鋭選抜展」(〜2/8)で見た大西伸明さんの作品は、全く何もないところから存在が現れるでもなく、消えていくイメージでもなかった。それが引っかかって、始まったばかりの個展に足を運んだ。

■博物館で展示されていたものが殆どだが、個展会場だけにある作品もいくつかある。大西さんは、0と1の間にも数えきれない数があるように、何かと何かの隙き間や、その間にある微妙なものごとの存在を表現したいという。展覧会のタイトル「infinity gray 」は、どんなに色を重ねても完全には黒にも白にもならず限りないほど幅をもつグレーの曖昧な性質をそのイメージに重ねたのだそう。

■白を起点とすると黒は限界。作品では、型をとって手を加えた最も本物らしい部分が黒だと言える。白が無ではないように、透明な部分も全くの無ではない存在感がある。制限された範囲の中で見せる「グレー」だ。どこまでも微妙な「グレー」の幅が意識されているせいか。現物から型をとっている形態は実物と変わりないが、色が塗られた部分も、飲食店のショーケースにある食べ物のサンプルのような、そっくりというだけの印象はない。

■カニ、ステーキ用の肉、ガラスの破片など、作品の日常的なモチーフには特に脈絡がない。でもなぜか、それらのものに同じ要素を感じてもやもやした。後からそれは、何かの行為の後に残る「跡」だと気づいた。調理すると油の出る肉、粉々になるレンガやガラス、水を飲むためのコップ。どれも、壊れても消耗しても完全には消えてしまわずに残骸や残りかすといった目に見える跡を残す。それもまた「グレー」の要素で面白い。表現についてはまだ模索中という大西さん。これからの発表も気になる。

大西伸明個展 "infinity gray"
2004年2月3日(火)〜2月22日(日)
ギャラリーココ
京都市東山区三条通り神宮道東入南側ホリホックビル2F
(地下鉄東西線「東山」下車1番出口より東へ徒歩5分、又は市バス5番「三条神宮道」下車すぐ)
12:00〜19:00(土曜は17:00まで)
入場無料
TEL.075-752-9081


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2004-02-03 at 03:48 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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