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2004/01/06
鈴木康広 山極満博展
「“私”からそれる」
山極満博 展示風景。
手前右「plastic cup」左「non-drowsy」2003
■「行方不明」と題された二人展。生活とアートの融合をテーマに、若手作家を紹介する「art-life」シリーズの2回目となる。
■「自分自身が行方をくらましたいタイプ」と笑う山極満博の作品から展覧会は始まる。旅において、目的地から目的地に移動する間の、後からイメージとして残っている光景を、写真をデジタル加工したものやペインティングで構成している。飛行機から見下ろす夜景のプリズムの映像は美しい。遭難して雪の孤島に降り立った人のような小さなオブジェが、クスリと笑いを誘う。飛行機の立体作品は、真っ白で少し丸みを帯びている。企業名も宣伝もない。景色も見た人の想像で、どこであってもいい。
■山極の旅のゾーンをくぐり抜けた先に、鈴木のインスタレーションがある。白い葉っぱがくるくると8メートルもの高さの塔から吹き出され、雪のように舞落ちる。葉の表には開いた目、裏には閉じた目が描かれ、まばたきをしているように見える仕掛け。それは、「人はまばたきをする度に、そのとき何かを見逃している。けれど見逃したり、見間違えることは、何かが生まれる瞬間」という着眼点からつくられた。子供の遊びのように素朴でいて、詩的なものがある。
■二人の世界を行き来していると、「私が見ている」というよりも、「世界から見られている」という気持ちになった。あるいは「世界のすべてが見たい」という夢や欲望もあれば「私が見ていなくても世界は動いている」というあきらめや安心もあるという感じか。
■目を見開いてよく見ることも大事だが、閉じて想像するときにわかることもある。山極の作品は、既存の意味から逃げて、別の意味を広げようとするものだ。そのときちょっと考え方をそらして、いったん「私」を行方不明にさせる、つまり知らない自分になって見てみることも自己を解放することになるんじゃないか。まばたきにはそんな役割もあるのかもしれない。
鈴木康広 山極満博展
2004年1月6日(火)〜1月18日(日)
スパイラルガーデン
東京都港区南青山5-6-23
(表参道駅B1出口すぐ)
11:00〜20:00
無休
TEL 03-3498-1171
words:白坂ゆり
左から「parallel lines」「plain」2002
「parallel lines」(部分)
よく見ると車が走っている
「scale:01」(拡大部分)2003
「holiday」2003
鈴木康広「まばたきの葉」
落ち葉のように降り積もった「目」たち
2004-01-06 at 04:25 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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