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2003/12/15
木村真由美写真展
「私探しゲーム」
会場風景
■ウエディングケーキの上に飾るための小さな花嫁のフィギュアが、それぞれの舞台ともいえる風景の中に置かれていたり、なんとも奇妙な装いを施されて写真におさまっていた。タイトルを照らし合わせながら見ていくと、にたっと笑ってしまうような作品が並んでいる。
■キスチョコの銀の包み紙で包まれた頭部だけがひょっこり出ている「キスを待つ女」。チキンの皮に体を包まれた人形の「肌質改善」は、いかにも化粧品やエステのコマーシャルなんかに使われていそうな言葉だ。タイトルの下に(ローストチキンの皮に包まれ、鳥肌体験。)といううまい皮肉も。
■「I'll Be Your Mirror」というタイトルのこの写真展はロンドン、ニューヨークの留学から帰国した木村真由美さんの日本での初個展。会場に並ぶ22点の作品は“Interchangeable Disturbances (ID) 〜変心ごっこの限りある夢幻”というシリーズで、木村さんが留学中に取り組んだものだそう。
■化粧をはじめ、ヘアスタイルから爪の先まで、女性達は自分が思い描く理想像になるべく熱心に変身しようとする。そして、古いものではなく新しいものに価値を置く流行に左右されながら、また新しい理想への欲求が起こる。一連の写真は、花嫁フィギュアの"彼女"がそんな"変心"を試みた記録なのだという。花嫁の人形がさまざまなものを纏い、ひとつの舞台の上に置かれている姿は、消費社会の中で毎日を生きている私達にも重なる。
■オセロゲームの盤の上で白いドレスのふたりが向き合う「美白バトル」、イカが全身をすっぽりと隠してしまった「イカしてるワタシ」。理想の容姿に変身する願望はどこまでも続きそうだ。木村さんの表現はシニカルだけれど、シニカルという言葉が含む冷淡な印象はあまり感じない。メディアに踊らされながらも新しい変化を楽しむ女性のチャーミングで健気な面がそれぞれのタイトルに表れている。
■「あいまい・ミー(me)」の花嫁は自分の影と向き合っている。実際、ひたすら更新しつづける流行の中で自分はあいまいになっていく。その状況の中で花嫁のフィギュアの"彼女"も、私達も「私を探すゲーム」をしているのかも知れない。
木村真由美写真展 I'll Be Your Mirror
2003年12月15日(月)〜2004年1月18日(日)
prinz 1F gallery
京都市左京区田中高原町5
(市バス-3番京都造形芸大行・「高原町」バス停前叡山電車-茶山駅より徒歩2分)
8:00〜26:00(最終日17:00まで)
会期中無休
入場無料
TEL.075-712-3900
「美白バトル」
「キスを待つ女」
「イカしてるワタシ」
「あいまい・ミー(me)」
「ロイヤル・コピー」
「魚眼レンズで見る宇宙」
2003-12-15 at 08:37 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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