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2003/11/01
BOOGIE-WOOGIE WONDERLAND展
「おとぎの国の後ろの正面」
会場となった旧県庁舎は重要文化財にも指定された建物だ。1916年に武田五一、大熊喜邦という当時の一流建築家により設計された。いまは、県政資料館など県にまつわる資料などを展示する施設となっている。
■秋吉台国際芸術村は、アーティストインレジデンス活動をはじめて5年になる。ここに滞在したアーティストユニットCANDY FACTORYが今回の展覧会ではキュレーターをつとめた。出品作家は、秋吉台にレジデンス経験のあるアーティストと、 CANDY FACTORYがこれまでにも共同制作を行なってきた作家たちだ。
■千葉にあるテーマパークでは、キャラクターに扮した人といっしょに“お約束”の記念撮影が行なわれる。微笑むポーズをとる姿が二面にプロジェクションされた。同時にこの場所では映像と無関係の宿泊施設での接客マニュアルの音声が流れている。こちらもやはり定番の質問や客の行動パターンを推測した受け答えがマニュアル化されているのがわかる。 楽しむための場所で、働く人たちもお客もマニュアルに縛られて行動するとはなんとも皮肉なことだ。 CANDY FACTORYのこの作品から展覧会ははじまる。
■廃虚のようになった沖縄でかつて栄えた夜の街の映像を大きく投影した横に、複数の米兵の顔写真が猛スピードでモニターに映しだされる。そして、「求む 軍用地 相談」などという文字が画面に流れるAFN(米軍運営の放送局)のテレビ画面を撮影し、3部からなるドキュメンタリー作品にしたのはショーン・スナイダーと古郷卓司の作品。
■ジョン・ミラーは山口周辺のタウン誌に実際に掲載された恋人や友人を募集する個人広告から17のサンプルをとりだし、分析を加えながら映像作品としている。向い合わせに置いた2台のモニターにリモコンで電源をオン/オフにする映像が流れていて、一旦消えたかのように黒い画面になったり、ついたりする。この作品を作った守章は双子のユニットで活動しており、もう1つの出品作は、都内の防災放送設備から毎日5時あるいは6時になると流れてくる音楽を現地に行って収録してサウンドインスタレーションとして中庭に流している。
■ NARSARSSUAQ のグリーンランド語で「大平原」を意味するが、同じ名前の集合住宅が事実上のグリーンランドの首都 NUUKに作られた。集合住宅は画一化された都市生活を行なう人には合理的にできているが、地元の漁師などにとって必ずしも住みやすいところとはいえない。そこになかば強制的に移住させられた地元住民にインタビューをしてまとめたものが 『NARSARSSUAQ / NUUK』だ。住む地域の気候や職業や文化等さまざまな差異によって価値観も異なることを認めていかねばならない、そうした人として基本的な態度を静かに訴える。
■順路に従って観てゆくと、オープニングで行なわれたオラ・ピアソンのパフォーマンス『nasdaq vocal index』の記録ビデオを最後に観ることになる。任意に選ばれた8銘柄の株価の1日の値動きを8パートの合唱曲に仕立てて、地元の高校のコーラス隊に歌ってもらうというパフォーマンスだ。7作家の作品はすべてが映像やサウンドというかたちを持たないものによるこの展覧会は、さまざまな側面から私たち現実をつきつけてくる。作家によるキュレーションというのは彼らの作品づくりの姿勢がそのまま反映されるような部分があり、癖は強いが、ここまでガッチリまとまってしまうと何も言うことはない。
Akiyoshidai International Art Village Presents CANDY FACTORY PROJECTS
BOOGIE-WOOGIE WONDERLAND展
2003年11月1日(土)~23日(日)
山口県旧県庁舎
山口市滝町1-1
(JR山口駅よりバスにて8分「県庁前」下車すぐ)
9:00~16:00(最終日17:30まで)
入場料100円(7日までは教育文化週間により無料)
TEL 0837-63-0020
CANDY FACTORY古郷卓司+高木哲
SEAN SNYDER + 古郷卓司
JOHN MILLER
"LIFE SUCKS(人生はむかつく)"
守章『VIEWER 視聴者』
MIKE BODE & STAFFAN SCHMIDT
"NARSARSSUAQ / NUUK"
MIKE BODE & STAFFAN SCHMIDT
"NARSARSSUAQ / NUUK"
(出版された資料、写真)
OLA PEHRSON "nasdaq vocal index"
初日に行なわれたパフォーマンスの記録ビデオ
守章『終日-23区』中庭に流れるサウンドインスタレーション作品
2003-11-01 at 01:00 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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