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2003/11/22

藤城凡子展

「宇宙の飼育」


art195_04_1会場風景


■盆栽の鉢のどこかに小さな人形を配置した「マン盆栽」のような見立ての世界は想像を掻き立てて純粋に楽しい。現在開催中の藤城凡子さんの個展は、ミニチュアが好きな人が見たら、何ともたまらない魅力を感じるかもしれない。水星、金星、地球、火星と、魚を飼育するように、水槽の中で太陽系惑星が浮かんでいる。人工の水草も入れられていて、ひとつひとつが惑星の飼育水槽になっているのだ。

■小さな惑星は水中に浮かんでいるように見えるが、水槽を埋めているのは水ではなく、透明シリコーン。地球をはじめ、火星や土星の衛星もちゃんとある。水槽の台座には、分布、大きさ、みわけかた、といった分類の解説がついていて、「エサ」という項目もある。海王星の「エサ」は、水素、ヘリウム、メタンガス、水星には太陽光と記されている。ここで衛星の位置が正しいか、とか、エサというには無理があるなんてことを考えるのは野暮というもの。水族館の展示のような、もっともらしい飼育環境をイメージさせられるのが面白い。

■ラミネートされた表面が暗闇で色鮮やかに光ったり、透明のボウルのシリコーンに小さな球体の浮かぶ作品は、太陽と月。ブラックライトの光が当たると、蛍光に発光して、会場のスポットの下で見るのとは違ったイメージに変化する。藤城さん流の夜と昼だ。

■藤城さんが以前から作品にしている女の子を描いた平面作品が2点ある。ひとつは太陽系惑星と女の子が水彩のように薄く彩色されたアクリルのドローイング。もうひとつは透明パネルに描かれた点線の輪郭の影が映り、白い画面の絵と重なる作品で、見る位置をあわせると、影で映ったコップの中に、白い画面に描かれたとても小さな地球がぴたりと収まって見える。かわいらしい印象はあるが、どちらの作品もうっすらと見える像で、はかない雰囲気が漂っている。

■小さな太陽系惑星の飼育空間を見ていて、地球も太陽も生きた天体だったと思い出した。現実には、数十億年先だが太陽が膨張して地球を飲み込むというし、さまざまな環境問題が深刻で地球が消滅するまでの時間も加速している。でも、人間は何かをつくり出さずには生きられないし、消費しながらにしか生きられない。創造することもまた人間の「エサ」と言えるだろう。生きているものは太陽にしても人間にしても、新しいものをつくり出しながら破壊もしている。そういえば、展示にはブラックホールがある。ひそかに小さな星を飲み込んでいるのだけれど、そのユニークでスマートな表現は心憎い。ぜひ、足を運んで確かめて下さい。

藤城凡子展 Cosmo farm
2003年11月22日(土)〜12月27日(土)
白土舎
名古屋市中区錦1-20-12 伏見ビル地階
(地下鉄伏見駅(東山線、鶴舞線)9番出口上がってすぐ、伏見ビルの地下1階)
11:00〜19:00
日・月・祝日休
TEL.052-212-4680


art195_04_2「海王星」


art195_04_3「constellation (部分)」
白い画面に影が映り、描かれた小さい地球が影の「コップ」の中に入る。


art195_04_4「microcosmos/basin」


art195_04_5「the sun/basin」


art195_04_6「the moon/basin」


2003-11-22 at 08:54 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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