« アジア・アート・アーカイヴと香港のアート・サポート事情 | メイン | 片山博文展 »
2003/11/18
まどわしの空間—遠近法をめぐる現代の15相
「あなたの視覚に挑戦」
川村直子「無題」
鉛とワイヤーのインスタレーション
■純粋に目を楽しませてくれる作品は大歓迎である。ちょうどこの展覧会を見た夜、TVのバラエティ番組で遠近法による目の錯角を取り上げていた。タイミングがいい。
■平面での3次元表現を実現した遠近法は、ルネサンス期からいわば常套的に用いられてきた。その刷り込みによって、私たちは画面に少しでも歪みを感じると違和感を覚えてしまうことがある。同展はそんな従来の遠近法を逆手にとったような15作家の作品が出品されている。
■第1章のタイトルは「遠近法を準備する空間」。川村直子さんのインスタレーションでいきなり遠近がつかめなくなる。面白いことに自分が移動したところが中心となり放射線上に広がってゆくのだ。なかなか引きの強い導入部ではないか。そして友利宇景さんの航空写真のような俯瞰図。微妙に視点の方向がずらされているよう。デイヴィッド・ホックニーの写真をコラージュした作品は、人や場を多面的に表現していて、昔から知っているものの改めて楽しく観賞した。
■展示ケースの裏側空間を使った鯨津朝子さんの作品は階段を上がって覗き込むようになっていた。無造作なドローイングのラインが見る位置によって奥行きを出したり消したりする。映画「CUBE」のセットを思わせる屋代敏博さんの部屋も圧巻だ。下から写した「鉄塔」の写真を全面に張り巡らせている。それぞれの塔の高さは想像するしかない。ジョルジュ・ルース作品も写真から憶測するしかないものだ。ある角度から見る時にだけ浮かび上がるマジック空間である。
■視覚の魔術師といえば福田繁雄さん。ここには鏡に映し出されるとグランドピアノに見える立体を出している。一体どのように元となる抽象形を導きだしたのか、そのプロセスに想いを巡らせるだけでもパズルのよう。最後の部屋は「メタモルフォーズ」。中村宏さんとタイガー立石さんの平面が展示されている。富士山に対面してもの言いたげな女学生のマネキンと、4コマ漫画のようなオチのある絵画が笑いを誘う。
■ちょっとお堅いタイトルは付いているけれど、子供も大人も楽しめるとてもユニークな展覧会。それにチラシのデザインは文字と線を駆使してこれでもかというくらい頑張っている(笑)。とりあえず脳を覚醒しにいらっしゃ〜い。
まどわしの空間—遠近法をめぐる現代の15相
2003年11月18日(火)〜2004年2月22日(日)
うらわ美術館
埼玉県さいたま市浦和区仲町2-5-1浦和センチュリーシティ3階
(JR京浜東北線・高崎線・宇都宮線「浦和」駅西口より徒歩7分)
10:00〜20:00
月・12/27〜1/4休
入場一般630円、高大生420円、小中生210円
TEL.048-827-3215
鯨津朝子
「OUT OF SPACE—空間の内から/外に—」
屋代敏博「鉄塔」
ジョルジュ・ルース「メッツ」
福田繁雄「アンダーグラウンド・ピアノ」
タイガー立石「借景亭」(左)「車内富士」(右)
2003-11-18 at 09:14 午後 in 展覧会レポート | Permalink
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
https://www.typepad.com/services/trackback/6a014e885bb6e5970d01538ef40229970b
Listed below are links to weblogs that reference まどわしの空間—遠近法をめぐる現代の15相: