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2003/10/03

篠田太郎展

「都市の森」 


art190_01_1展示風景


■ヘリコプター。ドラえもんの声が聴こえてきそうなタイトルだ。篠田太郎の作品の流れには、二面性がある。楽しいものとヒンヤリしたもの。でも、楽しく見えて不自由だったり、冷たさが清々しいこともある。

■また制作の方法論にもそれはある。ひとつは先に概念を組み上げて、ものとして落としこんでいく=作品化していく方法。もうひとつは、偶発性に任せて、そこに自分を泳がせる方法。前者は、主観的なヴィジョンを客観的に確かめていくやり方で、後者は客観的な出来事から潜在的な主観を探り出す方法だ。

■2000年の「パーソナル サテライト プロジェクト(私的衛星計画)2」(ナディッフ)のときに、宇宙ロケット開発の第一人者、的川博士に「科学でも、わかることが増えれば、それだけわからないことも増える」と言われてから、概念をピチッとつくる方法を少しほどき始めたようだ。とはいえ、一方向に進むのではなく、それぞれを分けて進めることにした。「アンダーコンストラクション」展で発表した「Garden」はそれを試した作品だ。占い師にパワースポットを聞いてそこに行って測量し、理想のガーデンをつくる。

■今回はさらに、自分が認識していない自分に聞くという方法を取った。「自分の知らないことを自分は知っているかも」。手を動かしてつくりたいようにつくってから、自分は何をしたかったのかを探っていく。「ヘリコプター」のアイデアは、ブラジルの海岸でヘリコプターによる救助シーンを目撃したことがきっかけ。現地の実業家は、車では強盗などの危険があるため、移動は自家用ヘリだという。お金はあるけれど、高級な貴金属は身につけられない。そんなことを重ねて、ラジコンとヘリという、自由と制御のような発想が生まれた。

■さて、その軸の部分は早くにできたが、その後展覧会のオープンが1週間遅れた。ヘリの下には、振興中の都市のような送電線がくねくね、うじゃうじゃ広がっている。なんとなく大きな建物とグラウンドが広がる、アトリエのある効外の街を思わせた。それぞれのスケール感が実際と異なり、どの視点に立つかによって景色の見え方が異なる。

■そういえば、我が家の前の電線に、日の出・日の入りの時刻にスズメの大群が停まるようになった。端から端まで隙間なく1000羽以上集まり、飛んできたスズメと自分の位置を入れ替えたりしている。最近は約15分ズレた。

■ヘリコプターは鳥で、送電線は樹木なのかもしれない。作品が「都市の森」のように見えてきた。

篠田太郎展「ヘリコプター」
2003年10月3日(金)〜31日(金)
GALLERY SIDE 2
東京都港区赤坂2-18-3 三葉ビル1F
(溜池山王駅12番出口より六本木通りを六本木方面へ、薬局前で右折)
11:00〜19:00
日・月曜休
TEL.03-6229-3669

words:白坂ゆり

art190_01_2ヘリポートに着陸させるのは難しそう


art190_01_3人命救助できるか


art190_01_4


art190_01_5アトリエのある街の米軍基地にあるライト。
それ自体の美しさには惹かれてしまう気持ちがある。

2003-10-03 at 12:39 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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コメント

篠田さんの作品は非常に感受性を刺激されます。自分の世界観が広がって行くようにも感じます。現代美術に興味を抱いたのも篠田さんの作品を目にしたことがきっかけでした。これからもいろんな作品を作ってほしいものです。

投稿情報: 細川 拓朗 | 2006/01/23 11:21:09

>細川さん
以前に書いたもの掘り出して(笑)コメントくださってありがとうございます。
うれしいです。
そうですか、篠田さんも喜ぶと思います。
今年は、海外にレジデンスに行くという噂を聞きましたので、充電して帰ってくるのが楽しみですね、まだ先ですけどね。

投稿情報: 白 | 2006/01/23 20:32:30