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2003/09/20

湊町アンダーグラウンドプロジェクト

「この壁の向こう側」


art189_03_1映像作品『ちいさいおうち』久保田テツ(6分)


■私たちの立つ空間は、地球上のどこかに位置している。けれども、いったいどこに自分がいるのかがわからなくなる、そんな経験をしたことがないだろうか。まさに都市の死角にあるこの地下空間ではそんなふうに自分の現在地、あるいは自分の存在そのものに疑いをかけてみたくなるような体験をした。

■案内係に誘導され、地下空間に入ると、まず目にするのが久保田テツの映像作品『ちいさいおうち』だ。画面の真ん中にある小さい家の存在を知らぬかのように、次々と建っては消えてゆく現代建築の画像。画面下1/5の部分に地下の動向―自然、地下道、地下鉄―を描写する。四季の変化も混じり合い展開してゆくこの作品は、同名の絵本を元にした映像作品だ。久保田は小型液晶モニターに、家のなかから外を見た映像も上映。

■地下空間は全長約190m、入口付近から天井の高さも間口の広さも先端部分に向かって次第に狭まってゆく。特殊なパースがついているので、遠近感が揺さぶられる。入口から先端部分はかなり遠く見えるが、逆に先端部分から入口を振り返って見ると、随分と近くに見える。時折、足元を通過する電車の音がまるで効果を高めるためにしつらえたサウンド作品のようにも聞こえてくる。

■この空間に対して、建築家の宮本佳明の提唱する「環境ノイズエレメント」というコンセプトを視覚化するのが、本プロジェクトのために結成された映像ユニットseesaw(甲斐賢治、雨森信等)だ。宮本は建築的な考えや計画に基づいて構築されたのではなく、計画と計画、計画と自然との挟間の矛盾によって発生する感覚的なノイズを「環境ノイズ」と呼ぶ。

■seesawは実写による列車から撮った景色や、雲の間の稲光の画像など、壁の向こう側にあるかもしれないさまざまな風景を、いくつかの壁面に投影してゆく。先端に近い場所にゆくと高橋匡太の蛍光灯を用いた作品がある。床にずらりと敷き詰めた1232本の蛍光灯は、この約3000?の空間をコンビニに見立てたときに、コンビニの照度と同じにするために必要な蛍光灯の本数なのだそうだ。発光する蛍光灯を見ると一瞬目眩いがする。

■人の内臓を覆うものを第1、身体の表面を包む皮膚を第2の、すると衣服を第3の皮膚、建築物等を第4の皮膚と考えることができるだろう。目の前にあるコンクリートの壁は私たちの第4の皮膚の内側とでも言えるのではないかと感じた。急に自分の身体が小さくなってゆくような奇妙な感覚に襲われるとともに、壁の向こう側にある場所に思いをはせずにはおれない衝動にかられた。


湊町アンダーグラウンドプロジェクト
2003年9月20日(土)~10月5日(日)
16:00~19:30(入場は19:00まで)
会期中無休
入場保険料 1000円
問い合わせ先
湊町アンダーグラウンドプロジェクト実行委員会
大阪市中央区淡路町4-4-5 CITY POLE 2F
文化農場内
TEL 06-6231-1748
[email protected]
http://www.underground-project.net

art189_03_2*入口から先端を見る渡す
(遠くに光っているのは高橋匡太作品)


art189_03_3*seasaw作品


art189_03_4*seasaw作品:森が地下に出現し、空を仰いだような映像が映し出される
(投影箇所は上の画像と同所)


art189_03_5高橋匡太作品
1232本の蛍光灯を用いたインスタレーション

・提供/コピーライト=湊町アンダーグラウンドプロジェクト実行委員会
・撮影者/福永一夫


2003-09-20 at 02:52 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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