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2003/09/09
渡辺依理展
「花飾り」
展示風景
■私の子供の頃は、少年のような格好が好きで、今でも少年のようなおばあさんになりたいのだが、買い物の合間に母が型紙と生地を選んでつくってくれた服だけは好きだったように思う。ウチは貧乏ではなかったが、経済的なことも自分の息抜きも子供に対する気持ちもいろいろあってのことだと思う。
■渡辺依理の油彩画は少し服地みたいだった。それは柄だけではなく、近付いて見ると、ボコボコと油絵の具の塊が付いていたり、テクスチャーが刺繍のように見えたりする。聞いてみるとやはり、もともとは服飾の仕事がしたくて、絵画と工芸の間のようなことがしたいのだと言った。装飾性も絵画の空間性も損なわない、新しいことができないかと思ってはじめたという。
■彼女はペンシルヴェニア生まれで、一歳を過ぎて日本に戻ってきたため、アメリカのことは覚えていないらしいのだが、ミドルネームがあることで、自分があいまいな存在のような気がしていたのだという。ミドルネームなんてかっこよさげだが、本人にとってはそうではないこともある。だから、自分を知るために絵を描き始めて、絵画に名前をいれてみたのだそうだ。でも、やってみて(こんな直接的なことでもないな)と思ったそうだ。ファイルを見たら、他にもちょっとあざといことも手を出してみていて、やってみて反省して次にいくタイプなんだとわかった。
■昔の着物柄が好きで、でも古いものではなく、新しいものも取り入れて違う次元のものをつくりたい。いまの自分も絵に出ているようにしたい。それでいて、品や質は重要だと考える。しかしそのためにも、塗り重ねて隠していたような自分の汚さを、削ること/引くことで一度さらけ出してしまいたくて、「まちぼうけ」のような絵も描いている。さらに現在はシンプルな方向に向っている。
■なんとなくDMの予想通り初個展だったが、そのDMも良かったのだ。絵はそんな風にまだ動いている最中のまま、という感じだった。それでも初個展にしかない潔さというものもある。服に名前の刺繍をしてもらったときの気持ちや、フリーダ=カーロがリボンに文字を書いて画面に入れてしまうような感覚。いましか描けない絵を、大事にしておいてもいいんじゃないだろうか。
渡辺依理展
2003年9月9日(火)〜9月27日(土)
人形町エキジビットスペース・ヴィジョンズ
東京都中央区日本橋堀留町2-2-9 ASビル1F
(人形町駅A4、A5出口より徒歩3分)
12:00〜19:00
日曜・祝日休
TEL.03-3808-1873
words:白坂ゆり
「うずまきダンス」2001年
部分
「うずまきダンス」2001〜2003年
「カーブを曲がる」2002年
「まちぼうけ」2003年
2003-09-09 at 03:04 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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