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2003/08/23

武田俊彦展

「記憶の余白」


art187_03_1「horizon 」2003 石膏製、木製台


■武田が海を渡って放浪の旅をしていた頃に見た風景の記憶が作品になっているという。飛行機の上から見える地表のうねりを白い石膏で作り上げ、その穏やかな稜線に目線の位置を合わせると白い壁に稜線をなぞって描いたグレーの線がひかれていることに気づく(写真には写っていないのが残念)。ぼんやりとそのランドスケープを眺めていると、脳裏に浮ぶ風景と目の前の線が重なってくるような気になる。

■「void」は“からの"とか“欠けた"という意味。このタイトルのついた作品は、雪をいただいた山の頂上付近のようにも見えるカタチがパネルに油彩で描かれている。余白を多く残したこの絵には、確認不能であるが、何かの風景の一部のようなカタチが認識できる。雪は太陽の日差しをはね返して輝き、眩しさでそこにあるものを隠してしまうようなところがあり、記憶にあるカタチだけを描いていったのだそうだ。

■「Iceland Hotel」というタイトルがついているホテルの窓から見た風景のドローイング2点はヒマラヤで描いたもの。旅先で手に入れたクラフト紙は、自分が見たものを何とか残しておきたいという強い気持ちが自然に表わされている。もの静かな絵だが、ここにも見ている自分自身の記憶のなかの風景をいつしか重ね合わせていた。

■紙風船の表面には世界地図が描かれている。紙風船を切り抜いたあとの白い余白の部分がフレームに入っている。でこぼこした紙風船の地球を見ながら、そこに描かれた線や色そのものではなく、普段は記憶の片隅にもないような風景をぼんやり頭に浮かべていた。記憶の余白のなかに作品を見ながらいろんなかき込みをしてみたくなるのがこの展覧会だった。


武田俊彦展 「wandervogel」
2003年8月23日(土)~9月13日(土)
gallery TWINSPACE
大阪市北区天満4-1-2天満佐藤ビル1F
(京阪電車、地下鉄谷町線「天満橋」駅北出口13階段北西へ7分)
13:00~20:00 (土~19:00)
日休
TEL.06-6352-6903

art187_03_2「horizon 」2003


art187_03_3「void」2003 パネルに油彩


art187_03_4「drawing snow」2003 紙にアクリルグワッシュ、インク


art187_03_5会場風景/右:「drawing snow」、左:「Iceland Hotel」


art187_03_6左右とも「Iceland Hotel」1997 紙にアクリルグワッシュ


art187_03_7「nova」2003 紙にシルクスクリーン
世界地図と市販の紙風船と同様の縞模様がシルクスクリーンでプリントされた作品。切り抜いた残りの余白が額装され、切り取られた部分は張り合わせて丸い風船状になってる。


2003-08-23 at 09:39 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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