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2003/07/01

2000年後の冒険ミュージアム展

「チャレンジの夏」


art186_02_1連日開催されるワークショップ参加者を会場に導く柴川先生


■気がつけば夏まっさかり。先日、子供たちを対象にした夏休みにぴったりの企画展を見に広島県福山市を訪れた。連日、市内外の幼稚園、小中学校の生徒たちがワークショップを訪れ、賑わっているという。

■その昔、福山市には芦田川の川底に埋もれてしまった町が存在していたそうである。14世紀に栄えた草戸千軒(くさどせんげん)町で、日本を代表する中世の集落跡としてその筋の人たちには知られている。発掘がスタートしたのは1961年で、もう30年以上にわたり調査が行われ、当時の民衆生活の実態が少しずつ解明されてきた。同館では平常「よみがえる草戸千軒」と題し、草戸千軒の一角を実物大で再現して、発掘された遺跡を陳列している。

■福山市在住の柴川敏之さんは、草戸千軒にインスピレーションを受け、2000年後の遺跡を想定した作品を発表してきた作家。歴史博物館での今回の展開は、彼の作品と歴史資料をミックスさせて展示するという画期的なものだ。土器や道具など本物の遺跡と今から2000年後に発見されるだろう出土品らしく加工されたキューピーや携帯電話を、同一の陳列棚にアトランダムに並べている。どれが昔のものなのか、よく観察しないと判明しないものもけっこうある。「今日遺跡とされているものも研究により導き出されたものであって、実際のことは誰にもわからない。同様に、この時代の日常品も未来には21世紀の遺跡として語られる可能性があるわけです。我々が生きているこの時代も歴史の断面であることを感じとってもらえればと思っています」と柴川さん。

■現代の遺跡を和紙に写し取る拓本ワークショップは大盛況。グループで制作した拓本は博物館エントランスの吹き抜けの壁面に貼られ、取材時(7/25)もかなりの数が展示されていた。側には望遠鏡が置かれ、子供達はバードウォッチングのように自分の制作した拓本を鑑賞できるようになっている。幼稚園や学校が授業や体験行事として申込んでくるため、数百人の子供達が会場に溢れる日も少なくないらしい。他に化石を制作するワークショップなどあるが、いずれも早期に定員に達したため既に締め切られている。

■学校で教科をクロスオーバーさせた教育が全盛の時代、歴史(社会)と美術(図工)をミックスした同展は非常にタイムリーな企画と思う。子供ならばらくらく、大人にはちょっときつい入り口のトンネルに四つん這いになって入っていく。タイムスリップのはじまりである。

2000年後の冒険ミュージアム
2003年7月1日(火)~9月21日(日)
広島県立歴史博物館
広島県福山市西町2-4-1
(JR「福山」駅下車、北口から西へ400m・山陽自動車道「福山東」「福山西」インターチチェンジから約20分)
9:00~17:00(入館は~16:30)
月休(祝休日の場合は開館)
一般290円(220円)、大学生210円(160円)、高校生まで無料 ※カッコ内は団体20名以上
TEL.084-931-2513


art186_02_2柴川敏之作品が並ぶ展示室。相撲の土俵サイズの作品も


art186_02_3ここがワークショップの会場。嬉しいことに枕木の通路は歩いてもいい


art186_02_4子供たちが現代の遺跡を拓本にとっている


art186_02_5子供たちに大人気の覗き穴。何が見えるかな?


art186_02_6陳列棚には草戸千軒の遺跡と現代の遺跡が一緒に並んでいる。一見判別がつかない?。


art186_02_7階常設展示室には草戸千軒の一部が実物大で再現されていて圧巻。興味をそそる空間だ


art186_02_8

2003-07-01 at 02:34 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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