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2003/07/01

伊達伸明展

「時が染み込んだウクレレ」


art184_04_1萩邸ウクレレ


■取り壊される建物の廃材を素材にウクレレを作る伊達伸明さんの「ウクレレ化保存計画」は、以前にもリポートがあったが、今回の展覧会では、昨年火事で消失してしまった大阪の法善寺横町のお店や、今年のはじめに取り壊された東京江東区の食料ビルの一部などが使われたウクレレがあり、姿を消したそれらの佇まいが目に浮かぶようだった。

■テレビのニュースで見た横町の消火の様子や、取り壊される前に訪れた食料ビルの光景はまだ記憶に新しい。ウクレレを見て、改めてこれらの場所がなくなってしまった事実をしみじみと感じた。「法善寺横町洋酒の店・路ウクレレ」は、撤去作業の現場で運び出されているカウンターを偶然目にしたことから制作へとつながったのだそう。店内の写真にはウクレレの一部になったカウンターやくり棒も写っていた。

■側板にピンクの壁クロスが使われていて、綺麗な色が目立っていた「萩邸ウクレレ」。表からは分りにくいが、今は生産されていないモールガラスの窓が裏板に使われていて心憎い。改築される保育園の思い出に依頼されたというウクレレのお披露目会では園児がみんなで歌を歌ってくれたというエピソードも記されていて素敵だ。

■これまでに25本のウクレレが作られている。一緒に展示されている写真からは取り壊す前の建物の雰囲気が伝わってくる。私の実家も数年前に取り壊され同じ町内に建て替えた。古い家だったが、台風の時はガタガタと震えて怖かった木枠の窓も杏やクヌギのあった庭も忘れられない。思い出の詰まった建物がウクレレに姿を変えて、大事に残されることがとても羨ましかった。

■大阪の高校で一年間を通してウクレレを制作する授業も行っている伊達さん。拝見したファイルには高校生が制作したウクレレの写真の数々があり、生徒ひとりひとりの名前と伊達さんからのコメントが綴られていた。制作にあたって苦労した点なども記されていて、それぞれの思い入れがうかがえるカタログのようで楽しい。

■会場を訪れた時は雨が降っている蒸し暑い夕方だったけれど、ときどき伊達さんが何気なく弾いていた軽やかなウクレレの音が耳に心地よく、いっとき涼しい気分を味わえた。12日の土曜には会期中2回目のミニコンサートが開催される予定。今回展示されているウクレレの音色が楽しめる。


伊達伸明 建築物ウクレレ化保存計画
2003年7月1日(金)―7月13日(日)
アートスペース虹
京都市東山区三条通神宮道東入3丁目東町247
(地下鉄東西線「東山」下車徒歩5分)
11:00~19:00(最終日は17:00まで)
月休
TEL.075-761-9238


art184_04_2側板にはピンクの壁クロス、裏板には窓のモールガラスが使われている。


art184_04_3食料ビルウクレレ


art184_04_4愛星保育園ウクレレ


art184_04_5法善寺横丁洋酒の店・路ウクレレ


art184_04_6展示風景

2003-07-01 at 12:57 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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