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2003/07/07

荒井伸佳展

「すっと現わる」


art185_01_1「彼方」


■ギャラリィKでの前回展では、そこにツリーのような架空の空間が現われたような感じがした。「劇場」のようなそこに、「目の人」になってすーっと入っていくような感じ。それまで、個人的には、場とものをどうもってくるかが、とてもうまいという印象があった。うまいというのには両方の感情があって、サイトスペシフィックなアートの作法に乗っ取った「器用さ」という感じも受けていた。

■そして今回。小さな粒子をつないだようなラインが数本垂れている中を、黒い鳥が飛んでいるインスタレ-ション。ひとつひとつの粒子のなかに映り込みがある。長さを変えた垂直のラインの先には、五重塔の重しのようなものが付いていて、ラインがかすかに揺れている。一見不気味にも思えるが、鳥はよく見るとまるっこいユーモラスなかたちをしている。全体な風景としては、しばらく見ていると白い壁を背景に遠近感を失うような微妙な揺らぎがある。また、歩きながら見ると、ゾーイトロープの映画のコマのように、時間がカタカタと動くようにも感じられた。

■また、釣り下げるためのフックはわりと現実的で、それが興ざめというよりは、引き戻される感じでちょっと笑えた。シュールな感じもあり、ドローイングの「文明」というタイトルが暗示的でもある。権威を象徴するような建築物の宙吊り、重力への抵抗、黒い鳥、希薄さ、粒子に映る光とか。しかし、そんなに意味がない感じも受ける。荒井伸佳の作品は、けっこうクールな都会的な言われ方をされてきたとも思うのだが、もっと素朴な部分で言外のヘンな感じがあり、それがアートの言語に絡めとられずに、肩の力を抜いて引き出されるようになってきたのではないだろうか。明晰ではない手探りのところに、見る方はクラッとしたり、ぽっかり浮遊した感じを受ける。もっと広い空間でやれればとも思うが、だんだん「謎」の部分が楽しくなってきた気がする。

荒井伸佳展
2003年7月7日(月)〜8月2日(土)
ギャラリー北村
東京都港区南青山5-1-25北村ビル102
(表参道駅B3出口、青山通り沿い。アンデルセン手前)
日曜休 11:00〜19:00(最終日17:00まで)
TEL.03-3499-0867

※8/21〜/9/9、appelにて紫牟田和俊との二人展を開催。

words:白坂ゆり

art185_01_2


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art185_01_4五重塔が「ぶらん」と「ずしり」の間くらいの重さで吊り下がっている。


art185_01_5「civilization」墨絵のようだが、コンピュータで描いている。コンピュータならではの「にじみ」の味。

2003-07-07 at 02:39 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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