2003/07/05
アウト・オブ・ザ・ブルー展
「ライン越え」
栗林隆「Emperors Weltエンペラーズ・ヴェルト」
■都心には発表の場は多いが、継続的なレジデンシー(滞在制作)・プログラムは、地方に任せきりではないだろうか。東京都が主催する「トーキョーワンダーサイト」で、今後の継続をめざして、「レジデンシー(滞在制作)・プログラム」がはじまった。今回は、一律の制作費を保証され、展示場所に会期の1ヶ月前から入って制作。日本の作家、海外在住の日本人作家、海外の作家の3人を、今村有策館長が選んだ。
■栗林隆は、美大卒業後、ドイツに在住。日本では初めての発表となる。ウェットスーツを使ったペンギンがユーモラスだ。他の作品でも、陸と海を共有する動物を使っているという。体内に水が入ってフォルムを保っている。梯子を昇ると、ペンギンの頭の中をのぞくように、予想を超えた鏡面の景色があって驚いた。黒い床に水が張られていて、水面の境界が広がる。ギャップが良さといっても趣きが離れ過ぎな感じもしたが、これはもう体感しないとわからない。
■大巻伸嗣は、めきめきと力を伸ばしている。「トーキョーワンダーウォール」「トーキョーワンダーサイト」の出品で、主催者側も追ってきた作家だという。ギャラリーKの展示でも驚いたが、いつもまったく異なる空間をつくりあげる。今回も大掛かりなことをしているが、表情は一番シンプルになった。この空間の胎内が、安心できると同時に、奥になるほど狭くなり、抵抗感をもってくる。重力とのせめぎあい。自然のようで人工。SF的で禅庭のようで。
■前回の「ゲルハルト・リヒター展」のキュレーターでもあるドイツの作家マーティン・シュミットは、壁に入れ墨を入れるプロジェクトで、思った以上に至る所で遊んでいる。空間が身体で、壁が皮膚ということは頭でわかる感じもあるが、壁にプロジェクターで模様を映し出して、ドリルで彫っている。よく見ると深い。展示室に閉じこもらず、全体を見ながら自分の場所を広げたり、ズラしている。
■おそらく2作家は制作費は足りていないのではと思う。もう少し3つの作品が連続し、侵犯し合うことはできたかもしれないが、3つの作品、3つの空間を見たことに留まらないスケール感をつくり出していて、かなり見応えがあった。
アウト・オブ・ザ・ブルー展
2003年7月5日(日)〜10月26日(日)
トーキョーワンダーサイト
東京都文京谷区本郷2-4-16
(御茶ノ水駅、水道橋駅、本郷三丁目駅より徒歩7分)
月曜休 11:00〜19:00
300円
TEL.03-5689-5331
words:白坂ゆり
階段を昇ると…
大巻伸嗣「liminal air リミナル・エアー」
マーティン・シュミット「Wall Tattoos & Scabs ウォール・タトゥー&スキャブス」
2003-07-05 at 09:07 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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コメント
大巻伸嗣のインタビューです。
投稿情報: gaden | 2005/02/21 1:12:21