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2003/07/12

東明展

「あっちとこっちの間に」


art185_04_1作品全体


■3年前、" MURO "という展覧会タイトルで、カプセル状の3つの個室を同素材の管でトライアングルようにつないだ作品を作っていた東さん。今回の作品では、管と屋根を間にして端と端にある2つの個室が直線的につながれていた。

■左官職人さんの腕の良さが大事でもあり、時間も費用もかかることから、最近の新築の家には使われることが減った土壁。土が塗り込まれている薄暗く狭いカプセル状の個室の土の色はなんだか落ち着く。中にずっと座っていると瞑想でも始めてしまいそうだ。

■一人だけが座れる個室の管穴からは、向こう側の個室にいる相手の顔が見える。管は端から端を一続きにつないでいるのではなく、途中にある屋根の部分で途切れている。屋根の下を通り抜けられる通路があり、そこを通行人が通り過ぎた時には、それぞれの個室から顔を向けているふたりの視界は一瞬遮られる。

■全く関わりのなかった他者が突如目の前を通り過ぎて、たがいにそれまでの関係が隔たる瞬間、あちら側の個室からこちら側までにある距離が意識させられる。私が向こう側の人物と言葉や視線を交換する主体のようであっても、自分の意思には関係なく他者が介在するこの装置の中では、あるときは客体化した自分自身を感じる。

■隣の会場には、四つ目編に編み込んであるラテックスゴムのシートが、床いっぱいに敷き詰められている。床の面積よりも大きいサイズで作られているこの作品は平らに綺麗に整えられた面もあるが、ところどころ、しわが寄ってくしゃくしゃになっている部分もある。東さんは土木や建材に関することにとても興味を持っていて、作品は道路の造成工事もイメージしているのだという。

■ギャラリー奥には、ドローイングの小作品も合計17枚展示されている。線で描かれたパターンの作品だ。毛糸玉のようなものが描かれている模様もあるし、紐の結び目やねじれを模様にしたような絵もある。

■自己と他者の関係、なんていうと、眉間に皺を寄せて考え込んでしまいそうだが、どの作品にも、二つのものが関わり合うときの境界領域が意識されていると思った。この展覧会のタイトルは"Span"。帰宅後、辞書を引いたら「(川に)橋を架ける」という意味もあった。言い得て妙。"Span"の意味の数々にとても納得してしまった。


東明 "Span"
2003年7月12日(土)―8月9日(土)
Kodama Gallery
大阪市中央区備後町4-2-10 丸信ビル2F
(地下鉄本町駅2番出口より北西へ徒歩2分、京阪淀屋橋駅より南へ徒歩10分)
11:00~19:00(最終日は17:00まで)
日月休
TEL.06-4707-8872


art185_04_2カプセル状の個室。


art185_04_3管穴の先に見える反対側の個室の東さん。


art185_04_4ラテックスゴムの帯を編み込んだ作品。


art185_04_5


art185_04_6ハガキサイズの画面にペンで描かれている。


art185_04_730×30cm 四つ目編みの紙に描かれた模様。


2003-07-12 at 12:37 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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