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2003/07/18

束芋×できやよい展

「異彩!偉才!奇才!万歳!」


art185_03_1できやよい会場風景
正面壁:「てんてんぼう」(1997~99)147×315cm
マネキン作品:「無題」
右のマネキンが着ているのは津村耕祐とのコラボレーション作品「マザー」(2000)


■会場となったKPOキリンプラザの構造をうまく用いて4~5階にできやよい、6階に束芋を展示。まず入場するとできやよい作品が1996年(当時18歳)頃のものから最新作までずらりと並び、彼女の仕事の足跡を概観できる。アクリル絵具を指先につけて指紋を押すようにスタンピングして描いてゆく。さらにその一つ一つに目などがついて顔になっているのが彼女の作品の特徴。彼女が描く世界は、指先からわき出てきたかのようでもあり、また、支持体であるパネルに紙を張ったものや、マネキンなどの表面にわき出してきたようにも見える。

■紙粘度でつくったオブジェ、コスチュームやボディペインティングも含めてありとあらゆるものに描いてゆくが、ボディペインティングなどは写真でしか残らない。しかしその写真としての作品もなかなかのものだ。「トイレできのこ」(2003、4枚組、撮影・大島央照)は狭いユニットバスを使って撮っているが、キティちゃんのサングラスや手にもった小物、便座に座って演じるできやよいの何にも媚びない表情がいい。

■束芋は3つの映像インスタレーションを出品。目の前に投影された画像が足元で部屋をあらゆる方向に回転させることが出来て、ネズミの形のマウスをちゃぶ台の上でクリックしながら参加してゆく「にっぽんの御内」。部屋の中のある要素の細部に入り込んでいくといった目線を少しズラして、窓の外の町並みを俯瞰しながら他人の家の中を覗き込んでいくような展開になったのは「お化け屋敷」。

■もちろんこれら旧作2点も少しずつバージョンアップされていて質の高いものだが、新作「hanabi-ra」に至っては落としどころが機知に満ちていて、こころの中でこっそり万歳したい気分になった。入れ墨のある凛々しい男性の後ろ姿、と思いきや。彫りもののように見えていた花弁がはらはらと落ちてゆき、身体の上を鯉が泳ぎ、烏が飛ぶ。最後の花弁が落ちると、次の瞬間には右の小指から順に、手首、腕、首と崩壊してゆき、それが肉体をもった皮膚ではなく、そっくりにかたどった紙だったことがわかる。黒い背景に枝葉が残り、最後となる。この題名は「花弁」と「花火達」の読みをかけているというが。映像の流れる時間を体験してもらいたい逸品だ。

■学生時代から異彩を放ち、同年輩のアーティストたちのなかでも両者ともにその動向が注目される彼女たち。空間を共有せずに、フロアをかえて展示しているが、2人の作品をひとつの展覧会として観てこそ伝わってくる現代の「にっぽん」の時代感覚など、さまざまなものがあり、新作をまじえて見応え十分な展覧会となっている。


束芋×できやよい
「にっぽんの、ななかむら」
2003年7月18日(金)~8月31日(日)
KPOキリンプラザ大阪
大阪市中央区宗右衛門町
(地下鉄「難波駅」25番出口徒歩2分)
入場料/一般700円、学生500円、中学生以下無料
11:00~21:00(会期中無休)
TEL.06-6212-6578

words:原久子

art185_03_2できやよい新作インスタレーション(2003)


art185_03_3できやよい「とぶ」


art185_03_4「原始熊野。」
(c)できやよい/(社)和歌山県観光連盟 蔵


art185_03_5「お化け屋敷」(c)束芋


art185_03_6束芋「hanabi-ra」(2003)
インスタレーション風景


art185_03_7束芋「にっぽんの御内」(2002)
インスタレーション風景


art185_03_8束芋「にっぽんの御内」のネズミ型のマウス

2003-07-18 at 12:32 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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