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2003/07/19

フロリアン・クラール展

「発見伝」


art161_01_1「Ulm/Marktplatz-June 17,2002」


■アフリカ中央部のチャドから、推定600万年前の猿人化石が発見されたそうだ。これまで最古の人類とされてきたケ二アやエチオピアのさらに100万年前のもので、人類はもっと早くにチンパンジーとの共通祖先から枝分かれしたのではないか、といわれているらしい。

■ふだんは自分の系譜なんて二、三世代前ぐらいまでしか意識しないが、ずっとその前から続いているのだと思うと、途方もない気がする。その不思議さの前には「生まれてくるんじゃなかった」などと荒れるヒマもない。

■「最近の出土品」と題されたフロリアン・クラールの展覧会。街なかで、恐竜の化石のような物体が発掘されたという設定の写真。現実に撮った景色のなかに、CGで入れこんだものだが、その自然を装った緻密さには脱帽する。工時現場のコードや折れた柵など、もともとあったものもうまく生かされている。

■彼はこれまで、幾何学的なパターンをもつ建造物のような生命体のような作品をつくってきた。宇宙船あるいは海の生物、はたまた臓器のようなオブジェ。四季の変化を投影した地表のインスタレーション。今回おもしろかったのは、異物が挿入されたおかげで、現実の背景のほうが、さらに奇妙なゆがみを見せてしまったことだ。

■ウルムでは、塀の外側では、なにも知らずに歩いている日常風景がある。香港の夕闇は、ウエットで怪し気。バスの広告の子供達の笑顔も妙だし、車内も人影がブレていて、違う時空から紛れ込んできたみたいだ。もともと巡り合わせて映り込んだものと、ちょっと現実を操作した感じが、胸騒ぎを起こさせる。どの時代のどの場所にいても、私たちは常にある法則でつながっていると同時に、得体のしれない何かと共存しているのかもしれない。

■レントゲン写真のような三作品も、微妙な表面の質感に目が吸い込まれる感じ。それはテクノロジーのおかげだけではない。作り手の執拗さと求心力だと思う。

■人が考古学に惹かれるのは、そこに現代と変わらない、現代にも通じる教えがあるからじゃないだろうか。絶滅した恐竜のように、人類が滅亡しないとも限らないけど、アートはそれをくい止める知恵のひとつになるだろうか。その前に、アートが考古学になってはマズイけど。

フロリアン・クラール展「最近の出土品」
2002年7月19日(金)〜8月10日(土)
レントゲンヴェルケ
東京都武蔵野市吉祥寺南町1-15-1-201
(吉祥寺駅南口より徒歩5分、丸井裏手)
11:00-19:00(土曜13:00から)
日月休
TEL.0422-797-323

words:白坂ゆり


art161_01_2「HongKong/Causeway Bay-June 9,2002」


art161_01_3「HongKong/Causeway Bay-June 9,2002」より部分


art161_01_4「HongKong/Kowloon-June 10,2002」


art161_01_5「Vessl No.4 trapezodial hexacontahedron」A,B,C


art161_01_6「Vessl No.4 trapezodial hexacontahedron B」

2003-07-19 at 05:22 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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