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2003/06/20
vol.48 名和晃平(Kohei Nawa)
「"彫刻の表皮"からPixCellに続いています。」
PIXCELLシリーズ—ガラスビーズに覆われた羊、鳥、卵、蝶などは、透過する光と反射する光に包まれ、目の前に存在するにもかかわらず、物質感を喪失した不思議な存在に変化する。私たちの網膜に映っているのはいつも物の表面であることに注目した名和晃平が展開する作品世界は、現代を生きる私たちの視覚体験をさらに超越したところへと誘ってくれる。そんな作品を作っている名和にインタビューをした。
words : 原久子
■どうして彫刻を専攻したのですか?
油画と彫刻を選ぶのでは、どちらを選ぶか考えた時、僕にとっては、彫刻のほうが表現の幅を広げる可能性があるのではないかと思いました。
■進学校に在学した高校時代、芸大に行こうと思うようになった背景は?
高校の時はラグビー部だったのですが、練習のない日は美術教室で油絵を描いていました。デッサンも習いに行きましたが、石膏デッサンなどの技法を方法論から入って押し付けられることには戸惑いがありました。むしろ、僕が進路に芸術系を選んだきっかけは育った環境にあると思います。父は小学校の教師をしながら「子供の遊び」の研究をしていました。遊ぶ時の道具や遊びそのものを、子供が自分自身でつくることが大事だと言っていて、そんな父の影響は大きいです。子供の頃からナイフで鉛筆を削ることからはじめて、竹トンボや剣玉など昔からあるおもちゃを作るとか。
■ものづくりの基本がそこにあったということですか?
遊び道具を自分で作ることは現在の作品づくりの下地になっていると思います。どうしたら楽しく遊べるか、工夫が必要なんですよね。
■PixCellシリーズを作ることになったきっかけは?
学部の頃に作っていた「少年の膜」という作品かな。水粘土で少年の身体を作って、普通は他の素材に置き換えてゆくんですが、樹脂で表面を覆って水分が蒸発しないように「皮膚」を作って完成させた。水分を含んだ状態がそのまま表面に出てくる、そうした印象が新鮮に思えたんですね。“彫刻の表皮”ということを考えるようになり、そこからPixCellに続いています。
■2002年4月の個展準備はたいへんそうでしたね。
前年から準備をはじめていたのですが。吹き抜けの大きなスペースで、それまでになかった規模の個展でしたので準備が大変でした。ボールペンによるドローイングをシルクスクリーンに仕上げたり、羊などの剥製にガラスビーズを付けていったり、個展会場であるノマルエディションを仕事場にして制作していたのですが、大学時代からずっと一人で考えて作品づくりをしてきたので、作っている途中でほかの人から作品の内容についてつっこまれたり、疑問点を指摘されるという状況にはちょっと戸惑ったりもしました。ただ、それによって作品の根本的なところが変わるわけではないのですが、本気で作品について話をしてくれる人たちが周囲にいてくれるのは励みになりますし、いいリズムになってきていると思うんです。
■シリーズで展開しているPixCellについて聞かせて下さい。
Pixelは画素。Cellは、細胞、器、小部屋。この2つの概念をつないだ造語です。ガラスビーズで物体を覆い、全体ではぶつぶつしたオブジェになるのですが、表皮の色やテクスチャーがビーズ一つ一つに映し出されます。「もの」としてのリアリティは分解され、光の殻に置き換わるのです。また水槽の表面に泡を発生させる作品もあります。近作ではプリズムシートを使って、透明のボックスの中に虚像を漂わせるというものがあります。
■もうすぐ個展がはじまりますが、どんな作品になりますか。
写真ではなかなかわからない作品です(笑)。2次元でみた印象とは全く違いますから。作品は一見、物質から映像へと移行したように感じられるかもしれませんが、実際にはものを使っているので、むしろ“物質へ”というようなパラドクスを感じ取ってもらいたいです。「みる」ことにどれだけ意味があるか、絶対に足を運んで観に来て頂きたいです。
名和晃平展:PixCell
会場/ノマルエディション/プロジェクトスペース
(大阪市城東区永田3-5-22 tel.06-6967-1354)
会期/2003年6月28日(土)—7月26日(土)
開廊時間/11:00〜19:00、土曜13:00〜19:00
休廊日/日曜日 祝日
会場/Studio J
(大阪市西区新町3-14-8 tel.06-6110-8508)
会期/2003年6月28日(土)—7月26日(土)
開廊時間/13:00〜19:00
休廊日/日、月曜日
内容/昨年の4-5月にノマルエディション/プロジェクトスペースにおいて開催した名和晃平展:Cell」に引き続き、その発展型として規模を拡大し、「ノマルエディション/プロジェクトスペース」と「Studio J」の2会場で開催される。
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words:原久子
red anima
PixCell-
PixCell-
展示風景
PixCell-Betterfly and Stag Beetle and Goldbug
PixCell-Garlic and Egg
PixCell-Sheep
PixCell-Wild Boar
PixCell-Wild Duck
PixCell[Zebra]
PixCell[Zebra]
ボールペン・ドローイングのUP
名和晃平(Kohei Nawa)
1975年 大阪府生まれ
1998年 京都市立芸術大学美術学部美術科彫刻専攻卒業
1998年10月
〜99年 2月 Royal College of Art,Sculpture course交換留学
2000年 京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
2003年 京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程彫刻専攻修了
博士号(美術)取得
個展
2000年 "アニマズモ"(ギャラリーそわか/京都)
2001年 "名和晃平 展"(ギャラリーマロニエ/京都)
2002年 CELL (Nomart Editions,Inc./Project Space/大阪)
2002年 (ギャラリーマロニエ/京都)
グル-プ展
1998年 京都市立芸術大学制作展【同窓会奨励賞】(京都市美術館)
1999年 "OSMOSIS"(Royal College of Art Gulbankian Gallery/ロンドン)
2000年 Boomerang Art Project, ''First Throwヤユ(Galerie WeissRaum/京都)
2000年 Boomerang Art Project in Kyoto(京都)
2000年 FEEDBACK展 (ギャラリーそわか/京都)
2001年 Nomart Projects 2001 vol.3 イメージと物質性(Nomart Editions,Inc./Project Space/大阪)
2001年 Boomerang Art Project in Bremen "Saw You"(ドイツ/ブレーメン)
2001年 版画工房ノマルエディション展 "NOMART 01"(海岸通ギャラリー CASO/大阪)
2001年 Boomerang Art Project 報告展 (ギャラリーそわか/京都)
2002年 Art in CASO(海岸通ギャラリー CASO/大阪)
2003年 京都府美術工芸新鋭選抜展【最優秀賞】(京都文化博物館)
2003年 trans-【共同企画】(京都芸術センター)
2003-06-20 at 11:25 午後 in アーティスト・ヴォイス | Permalink
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