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2003/06/01

横手山慎二展

「生まれちまったおかしみ」 


art182_01_1展示風景


■共同アトリエに展示スペースをつくり、展覧会を開催している、作家主導のアーティストラン・スペース「BOICE PLANNING」。住宅開発が進む東京の西にある。東京周縁に街ができる構造は、政治経済も含み背景は複雑だが、バイパス沿いの大型店鋪など定型的なものだ。しかも垢抜けない。帰り道、静まり返った夜の沿線で、東京って結局田舎でしかないんだなといつも思う。

■さて、今回の横手山慎二は、メンバーの一員ではあるが、満を持しての初個展。(いい意味で)ヘンなことを考えているなあというのが第一印象だ。

■鮭をくわえた木彫りの長—い熊、ベニヤでできたサーロイン肉。しかしこれはアイロニーを目的としたものではなく、生まれ出てしまった妙なものたちだ。世の中は、意味や目的にあふれている。ためしに、周囲を見渡してみると、名前のない無目的なものなどほとんどない。『我が輩は猫である』の「名前はまだない」猫のように、ただ生きている、ただ在るだけではなかなか許されない。アートは本来、言葉になる手前の、ただそれだけでいいものだ。

■しかし、言葉をつけなければ、それは時空に広がらない。ものがあるその状態が一次元、ものと人の交点が結ばれてニ次元、それが立体的に伝達されて三次元。時と場所を越える三次元、四次元活動としては矛盾を抱えつつやらなければならない。

■ここにある「わりばしのなる木」のように、原因と結果が同時に現れているものを彼はつくる。ベニヤやバターといった素材は人工的で、危ういながらもなんらかの構造をもってつくりだされたものだ。彼がやりたいことは、それを引き継いで別のもの(構造)をつくり出すことなので、ベニヤやバター自体を作ることはしない。捨てられて時間を経たベニヤを拾ってくることもある。

■ネームシールという対の単位(細胞)から構成された絵画は、そのすきまにもひし形のような構造ができている。そして、はがれやすい。ただ、こうした不揃いや塗り残しは、作品のクオリティとしては、きちんとできていた方がいい気もする。チープな素材を使って品質のよいものをつくりました、という型通りではなく、不全であって美しい瞬間を探していくことになるのだろう。

■個々の作品でレベルの違うことをまだいろいろ言い過ぎの感もあるが、オリジナルさが楽しめるので、不粋な理屈はこの辺で。

横手山慎二展—特別な人のこだわりパスタ
2003年6月1日(日)〜29日(日)
BOICE PLANNING
神奈川県相模原市相原5-12-47-2F
(橋本駅よりバス「三ヶ木」行「森の上」下車。「ロッキー」の右の道を入る)
10:00〜24:00(金土日曜のみオープン)
TEL.042-770-5217


art182_01_2「リフレクター」ベニヤ板にペンキで着色。側面にシールや紙レースの模様など。


art182_01_3「パレス」延びるのはタオル


art182_01_4「わりばしのなる木」ベニヤ板にペンキで着色。マグネット。白墨で描かれている。


art182_01_5「化粧板 青」ベニヤ板にネームシール


art182_01_6「リングワンデリング」冷蔵庫を開けると、バターでできたトラが。

2003-06-01 at 01:29 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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