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2003/05/29

近作展28 高柳恵里

「思いがけないかたち」


art182_04_1COVER/1999


■来年の秋には大阪市内に移転が決まっている国立国際美術館で現在、高柳恵里さんの個展が開催されている。高柳さんは実生活において心に引っ掛かった物事を忠実にかたちにしようとする。展示されている作品の殆どは、ありふれた既製品そのものだ。しかしよく見るとそれらは、目立たないように手が加えられており、日常では見ることのない状態で置かれていることがわかる。

■ガラスのコップに立て掛けられた鉛筆。実際にはその状態に鉛筆を置くことは困難で、作品の鉛筆にはさりげなく支えとなる針金が付いているのだ。木の小枝が置いてあるだけのように見える作品も、よく注意してみると、どこかがおかしいと発見できる。ぱっと見ただけでは分からない、そんな絶妙な工夫が他の作品にも施されている。

■きれいに揃えて積み重ねた文庫本の上にポストカードやレゴブロックが飾られた「置き物セット」。きっと多くの人が同じように積んでいるだろうと想像できる構成だ。[COVER]という作品の白い布は、箱をぴったりと覆うサイズに作られている。会場では触れる事はできないが、これらの作品は、ノートに記された手順に従って実際に本を積み上げたり、箱を組み立てるといった過程を体験することも要素に含まれる。

■水を張ったたらいのそばに二つのマットが置かれている作品のタイトルは「足ふき」。作品の前に立つと、水に浸けた足をマットに移すことを連想し、足を水から出す時の感覚も想像できる。これが、たらいとマットどちらか一方だけだったら、濡れた足を拭くことまではイメージできない。この作品は、溜める水の深さにも、たらいとマットとの距離にも注意が配られているのだという。

■タイトルや素材、サイズなどが表記してあるキャプションは、作品を理解するためのヒントにもなる。高柳さんは心に引っ掛かったものをかたちにするために、作品の素材やどうやって見せるか様々な試みを繰り返し、作品をつくっている。工夫の凝らされた展示や作品をひとつひとつ見ていくうちに、普段はこれといって何も思わない物そのものの存在に意識が集中していくのを感じた。私達は日頃、もののひとつの面だけを見て全体を理解したと思いがちだが、そういった見方を突き放すように新鮮な感覚を呼び起してくれる作品だった。


近作展28 高柳恵里
2003年5月29日(木)―7月21日(月・祝)
国立国際美術館
吹田市千里万博公園10-4
(モノレール「公園東口」駅下車徒歩約10分、「万博記念公園」駅下車徒歩約15分)
10:00~17:00(入館は16:30迄)
水休
観覧料/一般420円(210円)、高大生130円(70円)、小中生無料 (無料観覧日 6/14、6/28、7/12)
TEL.06-6967-2481

art182_04_2小枝/2002


art182_04_3コンセント/2002


art182_04_4相互関与/2001


art182_04_5置き物セット/2002

art182_04_6足拭き/2003

2003-05-29 at 01:59 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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