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2003/05/31

おんなのけしき 世界のとどろき 展

「アートで脳内革命」


art183_02_1関直美「Mrs.よつあし」2003年 作家蔵


■飯田橋駅から徒歩7分、外堀通りから少し西にそれた閑静な地にある東京日仏学院。そこの庭と建物を使ってテーマ展が開催されている。岡部あおみ氏がキュレーションを担当。アーティストたちの現代の世界観を提示する一方で、女性の在り方を探るというダブルテーマを意図している。

■まず、新緑のきれいな庭に設置してある関直美のどっしりと踏ん張る彫刻が眼に入る。よつあしシリーズの立体はマケットを入れて全部で4体。MR.とMrs.とあり、アニミズム的。上部に植物が植えられいて、もとからそこにあったかのように馴染んでいる。

■建物の螺旋階段部分を使って、女性たちの化粧前・化粧後の顔を並べているのは岩舘実紀。2階廊下にはミクロの生命体を坦々と描いて地獄と極楽の狭間を見せる真島直子の鉛筆画。見るほどに圧倒され、脳が刺激されてくるのが分かる。

■全出品作のうち映像が5作品と半数近くを占めている。日本アニメのキャラクターの版権を買いリメイクした作品を横浜トリエンナーレで出品していたピエール・ユイグのフィルムは、ディズニー相手に著作権問題で裁判を起こした「白雪姫」の声優ルシー・ドレーンがいきさつを語るドキュメンタリー。塩田千春の「マイ・ストマックエイク」は自らの月経の血がしたたり落ちる映像。うすぼんやりとしたそれは、リアルでないぶん意味深だ。

■沓掛光宏のお茶目なアニメーションは、エスカレートする都市開発をもっともっととケーキをねだる子供に重ねたテンポのいい作品。50年以上にわたり核実験が実施された地域と回数を世界地図上に落とし込んだ橋本公の映像は繰り返される悲劇を垣間見せる。

■目新しいのは評論の出品か。今西彩子のミソジニー(女嫌い)にまつわる理論書『ミソジニー精神分析―女嫌いからの自己治癒』と岡田伊央のアートと観客の関係を模索する評論小説『白い箱』が、出品作品として休憩テーブルに置かれている。出品は他に武智子、青木由佳というラインナップ。

■この展覧会、とても素敵なタイトルだと思うが、ほとんどの作品が片方に寄っていて、中間のグレーゾーンに入る作品によって両端をつなぎとめられている気がする。とはいえ、パンフレットを片手に思考しながら見ていけば、脳内がトドロきじんわりとした脳波の変化は期待できる。オープンで爽快な会場も一見の価値有りだ。

おんなのけしき 世界のとどろき
2003年5月31日(土)~7月14日(月)
東京日仏学院 庭園と室内
東京都新宿区市谷船河原町15
(JR・営団地下鉄「飯田橋」神楽坂方面出口より徒歩7分)
平日9:30~20:00、土曜9:30~19:00 
日曜日12:00~18:00(会期中無休)
入場無料
TEL.03-5261-3933

art183_02_2岩舘実紀「青鬚の塔:青鬚さま、あなたはどちらの私をお気に召されたのでしょうか?」2003年 作家蔵


art183_02_3ピエール・ユイグ「白雪姫 ルシー」1997年 マリアン・グッドマン・ギャラリー、パリ、ニューヨーク


art183_02_4真島直子「地ゴク楽」2003年 作家蔵


art183_02_5沓掛光宏「Decorate × Decorate」2003年 作家蔵


art183_02_6今西彩子『ミソジニー精神分析―女嫌いからの自己治癒』作家蔵(左)と岡田伊央『白い箱』作家蔵(右)


art183_02_7橋本公「1945-1998」(核実験地図)2003年 作家蔵

2003-05-31 at 01:08 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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