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2003/05/06

オットー・ラースロー展

「ふたつを結ぶ境界」


art180_04_1真ん中にまるで光が射しているような点がある黒い囲いの描かれた作品。


■赤や青といった色は使われているが、鮮やかではなく全体的に暗く鈍い色調の平面的な構成の作品が並んでいた。まっ先に目に入ったのは鍵穴のようなものが描かれている作品。実際、鍵穴だと思ったのだが、会場に置かれていた紹介文に、モチーフになっているのは鍵穴ではなく「古墳」である、と記されていた。

■オットー・ラースロー氏はハンガリー出身の作家。大学で建築を学んでいたが、どうしても絵が描きたくて美術学校へ入り、絵画の道へと転向したのだそうだ。昨年から今年にかけて日本へ遊学し、現在ブタペストで活動している。日本でははじめての個展となる今回の展覧会は、京都での会期を終えて、神戸の会場へ巡回する。

■キャンバスに描かれた左右対称の単純な形は、巨大な建物や墳墓の一部分を上から見たときの図のようにも見える。アクリルの上に油彩を重ねているこれらの作品は、近付いてよくみると、丹念に色が何度も塗り重ねられていることがわかる。図と地は、形と背景にはっきり分かれるというより、塗り込まれた色の奥行きをもってその境界をつくっている。

■彼は東洋哲学に非常に関心が高く、日本へ遊学する以前からも独学で曼陀羅や禅、日本文化について学んでいたのだそう。それらの思想に深い影響を受けて作品も制作されている。モチーフにされてる古墳は、生と死を分節する境界でもあるが、人間の住むこの世と神の住むあの世が出会うための祭祀の場でもあり、過去と現在をつなぐ際としての記号でもある。

■日本をはじめアジア各国には、陰陽、日月など、対立項とされるものが世界を二分して存在するのではなく、対立しあう二つのものから世界が成立っているという考え方がある。「阿吽の呼吸」というけれど、阿吽もまた対をなして一つであるもの。朗らかな笑顔で通訳をして下さった日本人の女性は奥さんだった。ふたりは最近結婚されたばかりだという。そんな事実にも、つながるという要素の奥深さを感じるのだった。


オットー・ラースロー展
2003年5月16日(金)~5月28日(日)
Gallery Ao
神戸市中央区山本通5-1-8 相楽園北門前
(阪神、JR元町駅西口より徒歩10分。地下鉄県庁前駅より徒歩5分)
12:00~18:00(最終日は17:00まで)
木休
TEL.078-341-5399

※2003年5月6日(火)―5月11日(日)
ギャラリーすずき(京都)から上記会場へ巡回。

words:酒井千穂

art180_04_2ギャラリーすずき(京都)での展示。


art180_04_3鍵穴のようにも見えるモチーフは前方後円墳。


art180_04_4三つ並べられた前方後円墳の作品のシリーズ。


art180_04_5上部に赤、下部は黒っぽい色が塗り重ねられたかたち。


art180_04_6建築物の平面図のようにも見える。


art180_04_7中心に古墳のかたちも縁取られているのがぼんやりと見える。

2003-05-06 at 02:42 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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