2003/04/01
Ongoing vol.2
「段取りの勝利」
作品とお客で賑わうA.B.Cafe店内(tel.0422-23-3778)
■吉祥寺のカフェで展覧会イベント。お気軽で楽しそうな予感のするチラシには12店鋪の特徴のわかる文章や地図、そして30数名の出品内容が掲載されていて、とにかく行ってみようという気にさせられる。ただしカフェだから作品を見るためにお茶を飲まなければならない。となると1日で全部はとても回れないなあなどと思いながら、とりあえず地図を片手にサンロードという屋根付き商店街から少しそれたところにあるA.B.Cafeを探しあて入ってみる。
■時は平日の夕方。席数がそれほど多くない分ゆったりとした明るいカフェ。作品を探すクセのある私は入った瞬間にいくつかアイキャッチ。けっこうお客さんが入っているので、近寄って鑑賞するのははばかられ、お茶を飲みながらなんとなく見回す。大部分がもとからあったもののようにしっかり溶け込んでいて、常連でなきゃ気づかないだろうな、とも思ったりする。入り口に小さく折りたたまれたチラシがあったので持ってきたが、それは店内のどの場所に誰の作品が設置されているかが記された案内ペーパーで、なかなか親切だなと感心。ここでの出品者は6作家と多かった。Ongoingで来店するお客さんもわりといるそうで日曜は賑わったとか(お店のスタッフ談)。メイプルシロップ入りカフェオレ、美味しかった。
■今度はfoo-angというアジアンカフェへ。2Fへ昇り、とても素敵な通路を通ってカフェに入る。落ち着いた照明の隠れ家的なお店。信楽土とガラスでできたランプシェード(幸谷慶太作品)とテキスタイル風の絵画(中嶋一央里作品)がとても心地よい空間を演出している。もとから存在していたお店の備品と作品をコラボレーションしたり、作家のアイデアも光っている。ここにもテーブルごとにメニューのような作品案内チラシが置かれていた。会期がはじまってから運営スタッフがつくってくれたらしい。
■時間的なこともあり今日はここで店鋪巡りを切り上げ、井の頭公園方面の基地カフェへ向かう。ここはギャラリー空間を情報センターを兼ねたカフェに仕立てている。なるほど、資料がたんまりと展示されている他、お茶やケーキ、展覧会特製カタログ、アーティストグッズも販売されていてなかなかくつろげる。昨年10月から動き出したプロジェクトであるが、まず協力してくれるカフェをピックアップ、約30店鋪くらい営業して11店鋪の了解をゲット。次に出品作家を公募。自分が展示したいカフェでの展示プランを募集したところ109名もの応募があった。それらの資料を各店長へ送付。今年1月には全作家によるプレゼンテーション会を実施し、作家同志が知り合う場を作っている。作家を選ぶのはもちろん各店長であるが、時には当人を面接したり、多大な作品資料を検討したりと、企画書以上に作家の制作について知ることで心が動いたりする。当初は1店鋪1作家のつもりが店長さんの意向で最高11名になった店鋪もでてきた。残念ながら展示にもれてしまった作家も自分たちができることを生かして運営スタッフ(デザイン班、基地カフェ班、ウェブ運営班、広報班、街頭ナビゲ-ション班)として参加しているそう。
■カフェを使った展覧会自体は珍しくないのだが、この企画が優れていると感じたのは様々な配慮を感じたことだ。店長が壁を貸しているわけでも、作家が安易に展示しているわけでもなく、双方向のやりとりが確実に交わされている。その両者をつなぐ実行委員会のフットワークの良さ、綿密な計画と大勢の協力者を得てたどり着いた一大イベントなのだと、やる気のある若者たちの存在を知って嬉しくなった。
■同企画の運営母体はクウェイク・センターという団体。芸術表現に関心を寄せる人たちが集うアーツセンターの設立を目的に東大大学院生によって旗揚げされ2001年から活動をスタートした。昨年はOngoing vol.1(六本木の旧三河台中学校で展覧会を開催)を実施し色々な反響を得たという。その時の教訓を活かして実行したのが今回の第2弾だ。土地も会場も変えて、社会とアートをつなげる空間をイベント的に仕掛けたのである。
■そうそう。肝心なことを書き忘れていた。Ongoingは「1970年代生まれ」によって企画され、出品者も70年代生まれという限定がつけられている。大学を卒業してからも制作を続けている人を軸にしたいということでこの10年間が選ばれた。ただしコンセプトに賛同していれば70年代生まれでなくてもOKとは聞いている。
Ongoing vol.2
2003年4月1日(火)~4月30日(水)
吉祥寺駅周辺飲食店11店鋪+基地カフェ
(Toki Art Space / Annex)
基地カフェ:4月6日(日)~4月30日(水)
東京都武蔵野市御殿山2-3-3
(JR「吉祥寺」より徒歩15分、JR「三鷹」より徒歩10分)
平日14:00~20:00/土日祝日12:00~20:00(無休)
入場無料
TEL. 080-5040-7162
words:斎藤博美
foo-ang(tel.0422-20-8056)は幸谷慶太さんと中嶋一央里さんの作品を展示
各店頭には目立つ看板「案内君」がかかっている(写真はfoo-ang店頭)
これが基地カフェ。座ぶとんでくつろげる空間
ずらりと並んだボックスには応募者全員のプランが閲覧できるようになっている
限定300部の手作りカタログ(カード型図録とお香とバッグのセットで2000円、バッグは4種、帆布タイプもあり)左はOngoing vol.2のチラシ
2003-04-01 at 01:55 午後 in 展覧会レポート | Permalink
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