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2003/03/29

ケンシ展

「Don't stop」


art178_02_1会場風景。コーナーにはさりげなく花器が置かれている


■1994年にギャラリーを開設。充分な天井高のある半地下の空間で、自身の制作発表と多彩なアーティストのプロデュースを平行して行ってきた。フローリングの床にコンクリートの壁、一見ニュートラルにも見えるこの場所は、ホワイトキューブに比べると実はかなり挑戦的な雰囲気を持っている。垂れ下がる鎖のカーテン、ネオンサインや台車、工事のフェンスといった主張の強い小道具の存在も大きい。演劇の人たちから舞台に借りたいと頼まれることも少なくないらしいが、貸したことはない。

■過去の作品から最新作まで、空間に負けないインパクトある例年の展示を知っていただけに、これまで見てきた中では地味な印象を受けるものだった。新作0号のドローイングが10点あまり。昔手掛けたタブローもいくつか混ざっている。枠幅の広いホワイトの額縁で統一してありすっきりと見せている。

■「この大きさで充分だと思ったんですよ」オーナーでもあるケンシ氏が語り出す。長年の制作により得た確信のある発言。厚紙を尖った道具でひっかいて全面に版画用のインクを塗り、ふきとって出てきた刻線によるドローイング。2月後半に紹介した山下律子さんと技法的には似ているが、描かれているのは身近な風景をもとにした抽象的な描画。心象と具象の中間に位置する風景画である。

■昨年は1年間にわたり自己の個展を実施した。一方、このギャラリーで紹介される作家は年々少なくなってきている。過去よりも進歩していない作品は扱いたくないのだという。「同じことを繰り返していては現代美術といえないでしょう?」プロデューサーであるケンシ氏のスタンスは厳しい。

■今回の会期も3ヶ月を超えるが、日が経つにつれおそらく展示は流動的に変わっていくだろう。これまでもそうであったように、作品が入れ代わり、小道具が動くのだ。「それも表現だから」。技法も展示もとどまるところを知らない作家の表現は、戻ることも渇くこともない。

ケンシ展
2003年3月29日(土)~7月13日(日)
and gallery
東京都世田谷区豪徳寺1-7-9
アンドギャラリービル1階
(小田急線豪徳寺駅より徒歩2分)
14:00~18:30(土日のみ営業)
入場無料
TEL. 090-7286-5361

words:斎藤博美

art178_02_2新作


art178_02_3新作


art178_02_4まだ展示されていない作品を見せてもらった


art178_02_5別な角度から見た会場風景。小道具によって演出されている


art178_02_6ショーケースには版画など小品がディスプレイされている


art178_02_7エントランスにあるアンティークなショーケースにも展示されている

2003-03-29 at 03:45 午後 in 展覧会レポート | Permalink

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